046  ウエストシティの内戦Ⅸ

 それを見た裕也は続いて、後ろを走り、店の外に出る前に足を組んでいる男の靴の裏に発信機を瞬時に取りつけ、扉が閉まるギリギリ二十センチ程の隙間を意図も簡単に通り抜けて見せた。



 ――――ふう……。何とかやり過ごせたか。



 ――――まあ、これで何とか少しは安全に行動できるな……。



 裕也は双葉たちがいる所へと走り、建物の陰に隠れる。



「ユーヤ、うまくいったの?」



「いや、まだ分からない。奴も魔導士、錬金術師なら魔力の反応に気づいているはずだ。今はそれよりも早めに移動した方が早い」



「分かった。マーキュリー、ありがとう。戻って!」



 二葉はタロットをマーキュリーにかざし、カードに戻した。



 透明化の魔法は消え、二人の体は実体化する。



「さて、ここから数十名とる先のマンホールに入り、地下水道を通るぞ」



 裕也は時計を確認しながらゆっくりと歩き出す。



 同時に教会の方では八時を知らせる鐘が鳴り響く。



 ――――八時か……。時間を相当使ったな。



 ――――それにしても次の鐘まで残り二時間。地下水道を通り、教会内に侵入するまでに約一時間。残り一時間で……。



 ――――時間一杯一杯か。



 建物の角を曲がり、住宅街に入ると、細い道を通り、人気のない場所を見つけると、そのすぐ近くにあるマンホールを開け、ゆっくりと地下へと潜る。



 穴の直径約一・五メートル。高さ約十八メートルある。



 穴の中は暗く、地下に潜っていくほどその明るさは無くなっていく。



 先に裕也から入り、その後に二葉が降りる。



「ユーヤ、下に何か見える?」



「いや、何も見えないな」



「絶対に上、向かないでよ」



「分かってる。しかし、この地下水道は思っていたよりも奥深い場所にあるな……」



 水の音は次第に大きくなってきており、ゆっくりと降りると懐中電灯を点け、地面があるかどうかを確認すると、そのまま飛び降りる。



「二葉、そのまま飛び降りてもいいぞ! 俺が受け止めてやる」



「本当に大丈夫なの?」



「大丈夫、そこから大体三メートルの高さだから‼」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る