022 三つ子の奴隷Ⅸ
「行くぞ。俺達には時間が無い。少しでも多く覚える必要がある。それに……いや、何でもない」
そう言ってセントラル大図書館の中へと入っていった。
「なるほど、そういう事なんですね……」
三久は錬金術の入門書、つまり初心者向けの本を読んでいた。
この図書館内には何十万ほどの本がこの建物内に眠っている。
机の上にはものすごい本の量が積み重なっていた。
近くには軍の人間がちらほらと見える。それに周りの一般客は静かに本を読んでいた。
一花は魔導書、二葉は魔法書、三久は錬金術の本をそれぞれ静かに読み漁っていた。俺もまた、同じように魔法に関する知識を得るために火属性魔法の本を読んでいた。
「それにしてもこれは結構な時間がかかりそうだな……」
「そうですね。さすがに数日間以上は、宿舎に持って帰ったりして見ないと追いつきませんよね」
「……三久は結構真面目過ぎ。時には休みも必要」
「休み過ぎなのはあんたの方よ。私だったらうまくやっていける自信があるわ」
「一花。ここは図書館ですよ。もう少し静かに……」
三人とも見た目は変わらないが、性格がほとんどバラバラ過ぎて、喧嘩になると面倒ごとになりそうだ。
「お前ら、全員うるさい。小さなことでそこまで言い合いになるな」
「「「桜井、裕也、桜井君は――――」」」
「黙ってて!」
「黙って……」
「黙ってください!」
同時に怒られた。
いや、どこからどう見ても俺は悪くないと思う。
「分かった。だが、お前らはもう少し改めるべきだ。周りを見ろ。こちらを見ているだろ?」
三人に周囲の目がどんなものかを言う。
軍の人間以外にも一般人がこちらをじっと見てくる。
三人は頬を赤らめながら本を凝視する。
やれやれと思いながらページをめくる。
この世界の法則は力を持つ者と持たない者の差が激しすぎる。だからこそ、自分の目でこの世界の事を知らなければならない。
そして、元の世界へと戻る手段も探さなければならない。
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