010  天の災厄Ⅹ

 知り合い誰一人もいない世界。



 そんな世界でたった一人活動している俺は一体この先どうすればいいのだろうか?



 同じ世界に閉じ込められた同じ冒険者の人達は一体どうやって活動しているのだろうか。



 この五年間、毎日ログインしかしてこなかったが、ギルドやパーティーがあることは知っている。それにこの世界はクエストをクリアすることで新たな大陸が少しずつ広がっていくゲームだったはずだ。



 まるで本当の仮想世界だな……。



 しかし、さっき食べた夕食には味がした。それに体の全ての五感がある。



 ゲームにしてはおかしすぎる。リアルな世界に近いと言えば、そうとも言い切れない。



 簡単に物事を理解するには相当な時間が必要になるだろう。



「さて、これからどうするかな……」



 馬に揺れながらゆっくりとセントラルに帰り着いたのは日時をまたいだ真夜中の二時過ぎだった。



 さすがに店は閉まっており、馬から降りると、何も告げずに馬小屋に借りていた馬を戻して、しっかりと手綱を結び、夜のセントラルの街を歩き始めた。



 こんな深夜に開いている店はバーやキャバクラなどそういった大人の店が多く。あまり入る気にならず、近くの公園の土管の中で夜を明かすしかなかった。



 辺りには人の気配もなく、街灯だけがこの土管の周りを照らしていた。



 中は薄暗く、一人くらいが横になって眠れるほどの大きさだった。



 寒い外の中で俺は装備ボックスから毛布を取り出して、体に巻き、寒さをしのぎながら一晩夜を明かした。






 土管の中に光が射し込む頃、俺はようやく重たい目蓋を開いて目を覚ました。



 さすがに疲れ切っていた体も少しは回復しており、土管の外に出ると、もう世間は活動を開始していた。



 街の中では人が行き交い、店もオープンしているところがたくさんあった。



「もう、朝か……。それにしてもここ数日は何と言うか……大変な日だったな……」



 独り言を言いながら公園の水道を使い、寝癖のついた髪を水洗いする。



 そして、大きな欠伸をした後、これからの事を考えた。



 確かにここ数日で一気にレベルが上がったことにはラッキーだったが今後、この訳も分からない世界で一人やっていくのには少し不安である。だが、ギルドやパーティーを自ら人の中に入るのもあまり好きではない。



 ここで立ち止まっていても始まらないと思いながら、街の中をぶらぶらと歩きながら考え始めた。

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