月を見しかな 3


 案の定、同じクラスの『佐藤耕治』の名前が点滅していて、思わず笑ってしまった。


「もしもし」


 出ると、真っ先に耳に飛び込んできたのは、ガヤガヤと煩い騒音。


 どうやら、外からのようだ。


『もしもし、相沢? 今どこ?』


 気さくな友人、佐藤の明るい声が聞こえ る。


「家だけど」


『えー。そうなのか』


 少しガッカリしたような口調に、「なんで?」と問う。


『いやー、バイトが早く終わったもんだから、お前が花火大会行ってんなら、今からでも向おうかと思って』


「そいつはお生憎さま。俺は人込みが苦手だ」


『そうだけどさー。弘人が誘った時、お前まんざらでもなさそうだったから』


 その言葉に一瞬、絶句した。


 そんなにも、あからさまたっただろうか?


 俺の動揺も知らず、せっかく早く切り上げたのになー、と電話の向こうで佐藤がボヤいている。


「行けばいいじゃん。織田と磐木も行ってる筈だぞ


 そう。電話がないという事は、つまりそういう事なのだ。


 自覚しろ。もうとっくに、花火大会は始まっているのだから――。

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