月を見しかな 2


 なのに。なぜか織田の方が磐木に付いて回っている。


 そしていつからか、それに嫉妬している自分がいた。


 磐木が『弘人』と呼ぶから、頑なに俺は『織田』と名字で呼んだ。


 ずっと友情の嫉妬だと思っていたのに、今日、違うと自覚した。




 これは、恋愛感情なんだと。




 そして織田にとって俺は、どこまでも磐木の次なんだと、はっきりと目の前に突き付けられた。


『なー、なー、相沢』


 甘えたようにそう言われ、磐木とは行かないのかと、問うために磐木に視線を流した。


 そして、違うと気付いた。




 ――磐木が行くのは、前提なんだ。




『ま、一緒に行く奴がどーしてもいない時だけ、メールくれ』


 あれは、『磐木と行かないのなら』と、 そう言ったも同然だった。


 磐木は無表情に俺を見返し、その言葉を受け流した。あいつにはきっと、俺が言いたい事は伝わったのに違いない。


 だが肝心な奴には、伝わらないままだったけれど……。


 溜め息混じりに再びシャーペンを持ったところで、携帯が鳴った。


 まさか、と思いつつも、すぐに画面を確認する。

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