風そよぐ 6


 ――なんで今、俺にキスしたんだ?


 祐志に訊いてみたい気もしたが、言葉にはしなかった。


 訊いてみるのが怖くもあったし、理由なん知らなくてもいいような気もした。


 例えこれが単なる悪戯でも揶揄からかいでも、俺は全然嫌じゃなかったから。


 たぶんみんなは、男同士で、友達同士でキスなんておかしいって言うだろうけど。でも俺は、嬉しかった。 


 今、訊きたい事は1つだけ。


「誰にでも、してる訳じゃないよな?」


 冗談に紛らわせて、いつもの調子で訊いてみる。


「当ったり前だろ。バカじゃねーの?」


 そして、いつものように答える祐志がいる。


「えー? じゃあ、俺で何人目なのさぁ?」


「アホか」


 呆れたように言う祐志は、花火を見つめたままでいる。


 初めてじゃないのには、違いないだろうけれど……。


 ――お前は、『特別』だよ。


 まるで祐志が、そう言ってくれたような気がした。



 只単に、俺の勘違いかもしれないけどさ……。




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