風そよぐ 4


「そう! このデカい音が『花火』って感じがして、余計感動すんだって」


 興奮気味に言った俺に、『そうかねぇ?』と納得してなさそうな声が返る。


「そうだって!」


『――旅行って……磐木と?』


 俺の言葉を無視して、相沢が訊いてくる。


「そう。あと、俺の姉貴とその彼氏」


『結構すごいメンバーだな。姉貴とその彼氏も一緒って』


「うん。俺達、キャンセル要員なの」


『なんだそれ?』


 じゃ、旅行楽しんでな、という声と共に、電話が切れた。


 スマホをポケットにしまって顔を上げると、花火を見ていた祐志がチラリとこちらに視線を向けてきた。


「どうせなら、あん時に送ってやればよかったのに」


「あん時?」


「猪名川。いい場所見つけたんだし」


 あそこからの景色も結構キレイだっただろ、と言った祐志に、俺は驚きの声をあげた。


「えぇーッ。それはダメじゃん」


 絶対、駄目だろ。


「なんで?」


 祐志はこんな事、思ったりしないのだろうか。


「だってあそこは、『俺達の場所』だもん」

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