風そよぐ 2


 葉や枝をかき分けるようにして進んで行く。花火の光だけが頼りなので、何度も足を滑らせた。


 俺達が向かっているのは、旅館の若い仲居さんが教えてくれた、花火を見るには絶好の『ポイント』。


 地元の人間も、あまり来ない場所なのだそうだ。地元の人間は、それぞれにお気に入りの場所を確保しているらしい。


 この先にあるのは、仲居さんとその彼氏のお気に入りの場所だ。だが、今年は2人共仕事が入って来れないので、俺達に譲ってくれたのだ。


 結構長く進んだ気がするが、地元民ならすぐに辿り着けたのかもしれない。ようやく、視界が開けて花火が姿を現した。


「うわぁ」


 スゲェ、と思わず溜め息が洩れる。この神社は小高い場所にあるから、視界を邪魔するものなんて何もない。


「猪名川の花火よりデカくねぇ?」


「そうだな」


 そう見えるだけなのか、実際に大きいのかは判らないが、この前見た花火よもりも壮大だ。田舎で高い建物がないから、花火の他に夜空に光を放つものもなくて、よく映えている。


 俺達は肩を並べ、しばらく色鮮やかな花火を眺めていた。


「……あ、そうだ」

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