風そよぐ 1
両側に夜店が立ち並ぶ神社の境内を、俺と親友の磐木祐志は、急ぎ気味に歩いていた。
「ああ~、よく見えねぇ~ッ」
先程から何度も響き渡る、花火が打ち上がる音。身を屈めつつ歩く俺に、祐志が背中を叩いてくる。
「その方が時間かかるって」
「いや。だって、こうすると屋台の隙間から少し見えんだもん」
「そんないい加減に見るより、ちゃんと見える場所に着いた方が早いだろ」
「そーだけどさー」
俺は今更ながら、出掛ける準備の遅かった姉貴の事を恨む。
「姉貴のせいだ」
その上、途中からは俺達と離れて自分達だけさっさと行っちゃうし!
俺がブリブリ怒っていると、隣から笑いを零す気配がした。
「何笑ってんだよ」
「いや。面白いね、沙耶花さん」
「バカ野郎。面白いもんか」
とにかく我儘。勝手に自分が浴衣着るのに時間かかっておいて、勝手に花火に遅れると怒りだしたんだから。
「潤一さんは、いい人だけどさ」
「そうだな」
そんな事を言いつつ俺達は人の流れから逸れると、鎮守の森へと足を踏み入れた。
「気をつけろよ」
前を行く祐志が振り向かずに言う。
「うん」
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