人の恋しき 6
通話を切って戻って来た弘人に言うと、「全然ッ」と憮然と首を横に振った。
「俺達を連れて行く条件は、『姉貴と潤一さんの邪魔をしない事』だってさ」
「ジュンイチさん?」
「そ。姉貴の彼氏。元々カップル同士で行く予定だったんだってさ」
「ふーん」
フッと笑みを零した弘人は、「カップル同士かぁー」と言いながら俺の髪に触れてきた。
「なんだよ?」
「いや、さっき触ってくれてたの、気持ちよかったから。――気持ちいい?」
俺の前に立つ弘人は、珍しく大人びた表情をしている。俺はその顔を見ていられなくて、瞼を閉じた。
「起きてたのかよ?」
「あんだけ触られりゃね。どう? 気持ちいい?」
「んー。……イマイチ」
「なんでだよーッ」
途端にガシガシと髪をかき混ぜてくる。目を開けると、ぶぅーといつものように頬を膨らます弘人の顔があった。
――そうだな。お前はそうやっていつも通りでいろ。
俺が、手首を掴む以上の衝動を抱かないように。友人に対して嫉妬なんかしないでいいように。
そしてこの友情が、壊れてしまったりしないように……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます