忍ぶれど 1
「なーなー。今日の花火大会、一緒に行かね?」
明日に終業式を迎えた日の放課後。
鞄を肩にかけながら周りを見回した織田弘人は、声を張りあげて言った。
「花火大会?」
「どこの?」
相沢弘和を含めた何人かが、その言葉に反応する。
「猪名川」
「いながわ~?」
「今日だっけ?」
顔をしかめる奴や首を傾げる奴、様々だったが、その中心で弘人はニコニコと笑顔を浮かべていた。
「私行くよ、彼氏とだけど」
「俺も。もう約束しちゃってるし」
「おーおー、いいねぇ。彼氏彼女のいる方々は」
涙を拭う仕草をした弘人が、『彼女いない組』へと期待を込めた顔を向ける。
「ちょっと遠いなー」
「部活あるし」
「バイトあるし」
「えー! それ終わってからでも行こうよー」
子供のようにはしゃぐ弘人に、何人かは「んー」と迷いの声をあげた。
1番最初に反応したクセに、その後は我関せずと鞄の整理をしている相沢へと、弘人が歩み寄る。
「なーなー、相沢」
「駄目。俺、人込み苦手」
「はい?」
カクン、と首を傾げる弘人から俺へと視線を流して、相沢は鞄を持ち上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます