しづこころなく 11
しばらくぼんやりと桜を眺めていると、駆け寄って来る弘人の気配がして、顔を向けた。
「お前さぁ、確かに綺麗な桜だけど、明日でもよかったんじゃねぇの?」
夜だけの綺麗さってのも確かにあるだろうが、この桜なら昼間に見ても変わらず綺麗に映えるだろう。
「えー。お前明日の天気予報知らねぇの? 明日、雨だぜ」
何やら手に持っていたものを俺に押し付けながら、弘人が言う。
「祐志はコーラでいいだろ? おばさんにはコレ。紅茶好きそうだから」
「あぁ?」
手元を見ると、コーラとミルクティの缶が掌に乗せられている。
炭酸持ってんのに、走って来たのかよ、こいつ。
「母さんの分はいらねぇのに」
「まあまあ。俺の感謝の気持ちってコトで」
弘人は俺の隣に腰を降ろしながら、眩しそうに桜を眺めた。
「さっきコンビニの帰りにコレ見つけてさ、ぜってぇ祐志に見せてやりたいって思って。――あ、天ぷらもらっていい?」
「ああ」
弘人はガサガサと袋を開けて、天ぷらの乗った紙皿と割り箸を取り出した。
「はい」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます