君がため 1

 卒業式の後、俺達美術部員は、部室――つまり美術室 で卒業する先輩達に花束を渡し、ささやかな送別会をして、先輩達を見送った。


 悪いがなんの感慨も浮かばない。そもそも俺達1年にとっては、3年の先輩と直接話す機会なんてほとんどなかった。途中入部した俺と織田おだ 弘人ひろとなんかは尚更で、入った時はもう3年は受験一色。デッサン一つにしても、目が血走ってるんじゃないかと思う程の真剣さだった。


「なーなー。どっちが鞄取りに行くかジャンケンで決めねぇ?」


 自分達の教室で卒業式が終わるまで時間をつぶしていた俺達は、鞄を教室に置きっぱなしにしていた。何故そんな事になってるかと言うと、ジュースでも買いに行くかと学校を出ている間に卒業式が終わってしまい、急いで美術室まで走って来たからだった。


 めんどくせーと思いながらも、「ジャーンケーン」と腕を振り始めた弘人に合わせて手を差し出す。


「俺の勝ちー」


 ニンマリと笑う弘人に溜め息を吐いて、俺はダラダラと廊下へと出た。


 ダルいとしか言いようがない。

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