第6話



「馬に乗った兵士?連中だったら、この街道を真っ直ぐ行ったぞ」


「道中で何度も見かけたが、けっこう荒々しい連中だったな」


「何やら『極悪人』が脱獄したらしいぞ」


「この先の・・・あそこに見える高い山。あの山の先に『隠れ里』があったらしいぞ」


「ああ。『盗賊のねぐら』の話か。あんな山の奥なんかにそんなのがあったとはな」


「まあ。ワシらが襲われる前に皆殺しになって良かったじゃないか」


「で、旅人さん。何の話だったかい?」


「・・・塩と乾物を」


「おお!そうじゃったな」



話一つ振っただけで

情報が何倍にも膨れて手に入った。



それにしても


ここでも

『賢者の隠れ里』は

知られていなかったようだ。



どれだけ

秘匿ひとくされた村だったんだ

ルーナの生まれ故郷は・・・





王都を出てから半年。




第一騎士団が

オレたちを探しているのは

分かっていた。



だから

街道を大きく外れて


山道を通って


やっと近くまで辿り着いた。



「それで?あんちゃんは『隠れ里』の見学かい?」


「ムリムリ。どこにあるか兵士たちも口を固くしとって分からんらしいぞ」


「ハハハ。違う違う。村が見えたから食料が切れる前に、補充で寄っただけだ」


「塩は王都に向かうと、質が悪くなるのに値は上がるぞ」


「え?そうなんですか。・・・じゃあもう少し買っていこうかな」


「ああ。そうしたほうがいいぞ」




商売上手だな。


だが

確かに王都より格安だ。


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