第13話 episode:13
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某高校の某下駄箱
某体育授業の前
靴を取り出そうとした某高校生は固まったのであった。
彼の名は佐々木幸太郎
「幸太郎~早く行かないと遅刻するぜ~。お前なんで下駄箱を見て固まって…」
親友の亮は彼の下駄箱を見て同じように固まったのであった。
「お前!それ…ラブレっ…フゴッ」
幸太郎は大声で驚く亮の口をふさいだのであった。
「お前これ以上しゃべるな…。」
幸太郎はその手紙を隠すように靴を素早く取り出し、再び下駄箱の扉を閉めたのであった。
「おいおい、誰からだったのか気になって体育どころじゃない!」
手紙の受取人である幸太郎よりもなぜかドキドキしている亮の姿のため息が出る。
「今日の体育はお前が好きなサッカーだろ、集中しろよ。」
「なんでお前そんなに冷静なんだよ!!」
(今時ラブレターって…なんかのいじめか…それとも…)
ネガティブな発想ばかりになるため幸太郎はいつもの何倍も授業に集中したのであった。
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ここは某高校の某教室
某そわそわしている女子高校生の姿がそこにはあった。
“ブー”
携帯のバイブ音が聞こえるたびにチェックしてしまう…
(今度は、メルマガか…。)
夏目梨々花は今までで初めて携帯のバイブ音に集中していた。
(このドキドキから早く解放されたい…なんでもいいから連絡してきなさいよね…。)
さきほど親友の麗と忍ばせた幸太郎への手紙に、梨々花の電話番号とLINAというアプリのIDをしっかりと記載したからである。
そしてドキドキのせいで集中できない授業は進んでいくのであった。
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体育の時間を無事に終えた幸太郎は迷っていた。
手紙を開けるか、開けないか。
「おい!幸太郎!さっきの誰からだったんだよ!」
「…まだ開けてない。」
「それはそれで失礼じゃないか?」
「そういうものなのか?」
下駄箱に手紙が入っている経験なんて初めてである。
「差出人くらい確認したほうがいいだろ。」
「封筒には、特になにも書かれていないな。」
封筒には糊でしっかりと封がしてあったため、ハサミで丁寧に開ける。
「?!」
少し目を通して誰からの手紙か察した幸太郎は急いで閉じる。
「誰からかわかったのか?」
ニヤニヤしながら亮がのぞき込もうとする。
「ただのいたずらだって。」
「なんだよ~てっきり愛の告白かなんかだと思ったぜ~。」
亮が興味を無くしたことを確認して内容を確認する。
(拝啓って…随分固い文章を書くな…。)
最後の文章を読んで幸太郎は目を丸くした。
【友人になったことですし、連絡先を伝えておきます。必ず連絡をしてきなさい。】
「…。」
なんで最後だけ命令なんだ…。
有無を考えずにLINAのIDを登録し連絡を入れた。
【佐々木幸太郎です。 よろしくお願いします。】
この連絡先いったい何人の男性が知りたがっているか、
考えたとたん寒気が止まらなかったため、幸太郎は考えることをやめたのであった。
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“ブー”
授業も全て終わり、携帯の画面を見てすぐに梨々花の心臓は飛び跳ねた。
やっと来た!どれだけ待たせるのよ!!
【改めてよろしく。】
一度打ち込み、文章を見返す。
(これじゃあそっけなさすぎるかしら…。)
「梨々花ちゃん~もしかして連絡がきた?」
「まぁね…。」
「なんて返したの?」
「…まだ返していないわ。」
「ダメだよ!早く返さなきゃ!!後は疑問文だよ!!」
「疑問文?」
麗はそういうと得意げな顔で話を続けた。
「相手から返事をもらうためには疑問文で送る!!これ基本中の基本だからね!」
いったいどこからそんな話を聞くのであろうか、
そして麗にそのような連絡をとる相手がいるのであろうか梨々花は疑問に思ったが仕方なく今回は素直に従った。
【改めて、よろしく。 今日はどんな1日だった?】
勢い任せに送信ボタンを押したが、後になって失敗を恐れた。
(なんで梨々花ったら今日はどうだったかなんて聞いちゃったのだろう…。)
「いいな~私もそんなやり取りをする相手がほしいな~。」
人の気持ちも知らないのんきな麗を鋭いまなざしで睨むのであった。
幸太郎から既読がついたのは数分後であったが、そこから中々返信は帰ってこない。
「…やっぱり変なこと送っちゃったのかしら…。」
梨々花は携帯の画面を見ながらため息が止まらない。
「梨々花ちゃん~いつもでも携帯眺めていないで帰ろうよ~!!」
「眺めてなんかいないわよ。画面を綺麗にしていただけ。」
空を見ると雲一つない夕焼け空であったが心はモヤモヤとしていたのであった。
“ブー”
帰る支度をしている最中に連絡を知らせるバイブが鳴る。
【今日は、空が綺麗だなと思う一日だった。】
そっけない文章に夕日の写真が1枚添えられており、梨々花にとって写真は直接見る空よりもきれいに見えたのであった。
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一方幸太郎の教室では、
「お~い、幸太郎!さっきから何写真撮ってるんだよ。」
「別に、綺麗だからなんとなく。」
「お前、写真なんか撮るキャラだったか?」
「うるせーなー。早く帰るぞ。」
幸太郎の急な行動を不思議がる亮と、夕日のように顔を赤くした幸太郎の姿がそこにはあった。
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