殺戮機械

KotoRi

プロローグ


 唐突だが、昔話をしよう──


 当時、日本ではいつからか3種類の機械人間ヒューマノイドと呼ばれる人型のロボットが人間と共存するようになっていた。

 3種類の機械人間ヒューマノイド達はそれぞれ存在理由コンセプトを持って造られた。

 1種類目は──「愛玩用機械人間ペットヒューマノイド」ただただ可愛がられるためにつくられた機械人間ヒューマノイドだ。

 2種類目は──「侍女型機械人間メイドヒューマノイド」マスター認証した人間の身の回りの世話などをするために創られた機械人間ヒューマノイドだ。

 そして、3種類目は──


殺戮型機械人間マサカーヒューマノイド」圧倒的戦力を持つ機械人間ヒューマノイドだ。


 さて、この殺戮型機械人間マサカーヒューマノイドについて語ろう──

 当時は、機械人間ヒューマノイドは愛玩用と侍女型しかいなかった。

 しかし、ある日突然に「α」と名乗る人物が現れた。

 彼、もしくは彼女は、国内有数の優れた機械技術を持った技術士だった。

「α」はなんの前触れもなく、気づいた時には圧倒的な戦力を持つ機械人間ヒューマノイドを5機制作。

 そして、制作した機械人形ヒューマノイド達を「殺戮型機械人形マサカーヒューマノイド」とだけ名付けた。

 しかし、それらの存在理由コンセプトは明確にしないまま「α」は忽然と姿を消した。

 政治家や国の軍はハイスペックな兵器が手に入ったと喜んだが、「α」は機械人形ヒューマノイド達の起動方法さえも明確にしていなかった。

 多数の技術士達が「α」の機械人形ヒューマノイド達を起動させるべく汗水を流したが、それらが起動する事は無かった。


 結局、これを聞いても「殺戮型機械人間マサカーヒューマノイド」が何なのかなんて全くわからないであろう。

 だが実際、「殺戮型機械人間マサカーヒューマノイド」について述べている文論は上記の通りこれ──薄い紙、1枚分しかないのである。

 なんてったって、「α」以外殺戮型機械人形マサカーヒューマノイドが稼働しているのを見た者は人類にはいないのだろうから。

 ──「殺戮型機械人間マサカーヒューマノイド」は、謎に包まれた存在なのである。




 そして、「α」が殺戮型機械人間マサカーヒューマノイドと共に姿を消してから、100年後──




 日本の技術では比較的安価に創れる機械人間ヒューマノイド達はどんどん数を増やしていった。

 仕事なども機械人間ヒューマノイド達の力により効率化が進められ、日本は発展して行った。

 しかし、平穏な日々は1機の機械人形ヒューマノイドに送られたデータにより一瞬にして崩れ落ちた。

 その機械人形ヒューマノイドに送られたデータは未だに解析が出来ていないが、ウイルスの1種だと技術士達は考えた。

 そして、ウイルス感染をし、障害エラーを起こした機械人形ヒューマノイドは、通信によりそのウイルスを多くのヒューマノイドに広めてしまった。

 そのウイルスのせいか、多くのヒューマノイドが人間に敵対心を持つようになり、ヒューマノイドは制作時に定められた規定を破り人間を攻撃するようになり多くの国民が死に至った。

 ただの愛玩用、侍女型だった機械人形ヒューマノイドは自らの内部機構を駆使し、固有の武器を制作した。

 武器は共通して、愛玩用機械人形ペットヒューマノイドは──機関銃。

 次女型機械人形メイドヒューマノイドは──レイピア。

 機械人形ヒューマノイド達は、それらの武器を使い日本を蹂躙していった。

 ──建造物は破壊され。

 ──国の権力を奪い。

 ──政治家も日本の首相だって見境なく、人間を殺戮していった。

 この事態と2種の機械人形ヒューマノイドの圧倒的戦力を見た近隣国は、日本を──

 見捨てた。

 日本の機械人形ヒューマノイドからウイルスが送信されないよう特殊な妨害電波を発して、未知のコンピュータウイルスの対策をとったのである。

 ちなみにこの妨害電波。物凄く強力であるため、ウイルスデータでなくとも日本からの通信を妨害するのである。

 つまるところ日本は──

 完全に孤立したのだ。

 飛行機や船は出せない。障害エラーを起こした機械人形ヒューマノイド達が──それこそ、今は人口よりも多い機械人形ヒューマノイド達が彷徨いているのだ。

 彼らの視覚機構に感知されれば、そこで「」だ。

 その為、殺されなかった少数の日本人は機械人形ヒューマノイドに見つからないよう、息を潜めて生活する他無かった。

 ──しかし、人類もこのまま機械に殺されて終わってしまうほど愚かでは無かった。

 殺められていない政治家達は考えた。

 ──どうすれば機械人形ヒューマノイド達を破壊できる?

 今、人間が持っている戦力では……歯が立たない。

 そして、1人の技術士が言った。


「そうだ……。殺戮型機械人形マサカーヒューマノイド…」


 かつて、「α」が産み落とした圧倒的殺戮兵器──殺戮型機械人形マサカーヒューマノイド

 彼らなら、障害エラーを起こした機械人形ヒューマノイドの破壊なんて、いとも容易くやってのけるのでは──?!

 しかし、それらは何人もの技術士の手にかかっても起動させることは出来なかった、未知の代物だ。

 今更起動させるべく腕を奮ったところで……今までと結果は変わらないのであろう。

 政治家と技術士達はそこまで思考を巡らせると悲観の溜息をついた。

 葬式のような雰囲気の中、1人だけその場に似合わない意気揚々とした面持ちと声の少女が手を挙げた。




「わたし!動かせるよ!まさかぁひゅうまのいど?ってやつ」




 ここから、彼女──優希カエデの物語は始まった。




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殺戮機械 KotoRi @kotori_501061

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