追憶のレヴァリエ ~Requiem for Noble blood~

金国佐門

プロローグ

avant-titleA「始まりは終わりゆく幻想の果てに」



 朝焼けの紫が空を染め上げていた。



 深く、暗い森の中――。



――私はただ、走り続けた。




 黒々と生い茂る針葉樹達。


 昼でさえ薄暗い場所だというのに、視界を遮る深い霧。


 銃声が鳴り響いていた。



 戦いは一向に終わる気配を見せない。


 狩るか狩られるか。


 それはきっと、生きている限り逃れることのできない。



 だからこそ、きっと終わりの来ない――永劫メビウス戦いロンド




 朝焼けの鮮やかなオレンジ色が紫のカーテンをわずかに染め始める。


 けれど――。


 銃声は一向に鳴り止む気配を見せなかった。




 眼前に映れども遠く――“その光”には未だ届かない。




 私は森を、ひた走る……。


 その先にある、かすかな“希望”を求めて。




 運命はもう、決まってしまった。

 それはもう変えられない。



 濁流のように全てを飲み込んで――。


――何もかもを、あとかたもなく、消し去ってしまったのだ。




 鳴り響く銃声。


 過ぎ去っていく樹々たち。


 どれだけ走ったことだろう。




 まばゆい白が溢れていた。



 それは刹那の眠りの始まり。



 けれど、私にとっては、永遠の記憶ゆめ




 夢――。



――夢を見ていた。



 それは過去。



 もう二度とは取り戻せない陽だまりの記憶。



 失われてしまった――今は亡き希望の欠片。




 さぁ、帰ろう。

 あの楽しかった日々に。


 夢の中でなら、きっとまた、彼らに会えるから。



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