マイノリティ・カースト

沢木圭

プロローグ

 クラスメイトの女子。

「ねぇ、綺人きいと君はどんなタイプが好きなのぉ?」


やめてくれ。



 男の友達。

「おお! 綺人! お前あのAVの新作みたか!」


やめてくれ。やめてくれ。



 数回しか会ったことのない先輩。

「あの…ね私、上臼井かみうすい君のことが好きなの!」


はぁ、はぁ、もいい!



 言葉が聞こえてくる。僕の大切な人達の声。


「おい、綺人」「ねぇ、上臼井君?」「どうした? 上臼井」「お前ってさー」「好きなの」「あの子可愛いよなぁ」「私としよ?」「綺人も好きだろ?」「上臼井も男の子だよね~」「これ貸してやるよ!」


大切なはずの人達の声。


「誰が好きなの?」「あいつお前のこと好きだって」「昨日あいつと」「綺人君聞いてる?」「でかい方がいいよな?」「付き合ってみる?」「経験者だよな?」「付き合いてぇ」「美人だなぁ」「上臼井くん可愛い」


怖い。



はぁ、はぁ、はぁ。

誰か助けてくれ。誰か、誰か!


 僕は僕の大切な人達を嫌いになりたくない。

好きなままでいたいんだ。


 だから! 誰か助けてくれ!

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