第17話 真昼2
「ところで私からも質問よろしいでしょうか」
小夜の発言により先ほどの話題は曖昧なまま流されることとなる。
誰も否とは言えず、頷くことしかできなかった。
「四条さん、先ほど雨川先輩って言いましたよね?」
それは真昼も気になっていた。
「えっ、言ったっけな」
小夜とは反対に、露骨に表情に出てしまう友人。
表情どころか声も普段より高く、体もそわそわと小刻みに動いている。
「言いましたよ」
「あはは……」
笑って誤魔化すしかなかったようだ。
相変わらずの手札の少なさに涙が出そうになるが、それが朝香の愛おしいところでもある。
しかし惚けたということは本人的には隠しておきたいことだということだろうか。
「まあ、それは良いんです。同じ学校なんかにいた者同士が社会に出て再会する。偶にそういうこともあるでしょう」
「そ、そうだね……」
「私が気になっているのは二人が元々お知り合いだったのかどうかです。四条さんがただ一方的に雨川さんのことを知っていたのか、雨川さんも四条さんのことを知っていたのか」
朝香に話す気がないなら無理に聞こうと思わなかった真昼だが、小夜ちゃんは容赦がなかった。
一見気遣っているようで、それを聞いてしまえば同じことだろう。
朝香が雨川のことをどう呼ぼうと本人の自由だが、重要なのは関係性なのだから。
ただ、その後の失言についてはさすがに聞かなかったことにしてあげるようだ。
聞いたとしても想像通りの反応が返ってくるからという理由もあるかもしれない。
過去はどうあれ、今の朝香はきっと雨川に恋している。
「実際先輩と後輩という関係だったのなら説明がつくことが多いのですが、じっくりと観察をするうちにそういう雰囲気でもない気がしてきまして。憎たらしいことに雨川さんは普段子供のような態度のくせにそういったことだけは隠すのもうまいので、そんな素振りをみせていなかっただけかもしれませんが、それはそれで何か怪しい関係ですよね」
真昼の聞きたいことを小夜が全部聞いてくれる。
朝香が可哀想だから、と真昼なら躊躇うことも全てだ。
ところどころ口を挟みたくなるような表現があったが、どうやら彼女を知るには表情よりも、言葉に乗る感情をみるべきなのかもしれない。
「あーやっぱりそうなんだ」
そして出てきた朝香の反応は、予想していたものとは違っていた。
「勘違いじゃなかったんだ……うん、私も気になってたんだよね」
なぜか共感してくる朝香を見て小夜が真昼に視線を向ける。
真昼は微笑を浮かべ、小さく首を横に振った。
助けを求めているのか、それともどうにかしろという意味なのか。
どちらにせよ回答は一つだけ。
この天然巨乳娘の思考は時に何よりも難解になる、だ。
「お二人のご関係はいまいち分かりませんでしたが、雨川さんはやたらと四条さんのことを気にかけているんですよね……」
朝香への追及をやめ、目を伏せた小夜から面白い話が出てきた。
普段一緒にいる小夜しか知らないことであり、もしかしたら雨川自身そのことに気付いていないのかもしれない。
「え? そうなの?」
「私にはそう見えます」
「やったぁ! うん……明日も休日だし」
それでこちらはこちらで、面白い反応をする。
わけのわからない誤魔化し方をして、安堵の様子を見せている朝香に生暖かい視線が集まる。
彼女の性格を知らなかったら、一発くらいは殴っていたかもしれない。
「小夜ちゃんの疑問には、うちが心当たりあるで」
朝香にしろ、小夜にしろ、彼女たちの想いに雨川が気付くのは時間の問題だろう。
それとも気付いていて無視をしているのか。
兄のことをおそらく二人よりも知っている身としては、どこか切なくも感じてしまう。
「お聞きしてもよろしいでしょうか」
「ええで」
だから言っておこうと思ったのかもしれない。
それはここにいる二人だけの問題ではなく、真昼自身にも当てはまっていることだったから。
「まず兄貴には好きな人がおる」
「え…………」
「そんなはず……」
言った瞬間、空気が固まった気がした。
朝香は早々に目を潤ませ始め、小夜からは不穏な単語が飛び出てきた。
ここで私って言ったら面白いだろうなと思いながらも、二人の反応が怖くてもったぶらずに言うことにした。
「その人に、今の春香はどこか似てるねん。だからとちゃうかな」
「私に?」
「ま、性格の方は似ても似つかんが」
「どなたでしょう。私が把握できていない方はそう多くはないはずですが……」
相変わらず小夜の発言が少々怖い。
若干不機嫌そうに身を乗り出してきたため、顔も怖い。
真昼は顔を背けつつ続けた。
「うちの姉ちゃん」
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