第62話 掌
掌の中で黒いものが広がる。
それが炎になって燃え広がらないように優しく、それでいて力が起きるように強く起こす。
それはとても難しいことだ。
現に俺が起こしている力は先ほどから大きさが安定せず、小さくゆらゆらと揺れていた。
なんとなく周りを見ると、シンジロウさんがすごい勢いで力を起こしているのが見えた。
あんなのに勝てるわけがない。ネガティブな考えが頭をよぎる。
でもシンジロウさんには勝ちたい。
シンジロウさんは俺らを裏切った人だ。
今はフェイトディザスタアの最中でうやむやになっているけれど、許すわけにはいかないのだ。
そう思って、自分の力をほんの少しだけ強く起こした。
夏樹は、力を周りに放たなければ安定して起こすことができるタイプのようで、大きな力を掌に収めていた。
星也は無心で力を起こしているようだ。
無心というのは一見問題に見えるけれど、雑念が入らない分いいのかもしれない。
つまり、皆いい感じということだ。
俺もこうしちゃいられない。
もっと強めに力を起こそうとしたとき、疑問が頭に浮かんだ。
加恋のことだ。
加恋は生贄になることこそ免れたが、いまだに目は覚ましていない。もちろん力も起こしていない。
力を起こしていない人間は必然的に消滅してしまうのではないのだろうか?
そんなことを考えているうちに、集中力が落ちてきて、俺の掌の中の力は小さくなっていた。
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