凶夢
みや
序
――阿片で見る夢は、いつも甘い。
辛い現実がどろどろに溶け、甘い夢になる。それが、私を酔わせる。
そんな夢に、私はいつも酔っていたい。
最近、どれが現実で、夢なのかがわからなくなってきている気がする。
でも、いい。
現実は辛すぎるから。
いつも、いつも、甘い夢に酔っていたい。
「何が、真実だったのかしら?」
私はつぶやく。
甘い煙を吸い込みながら。
清朝最後の皇后と呼ばれたこと。
その夫は、実はほかの女のほうを先に選んでいたこと。
廃位されたこと。
夫がほかの女と離婚したころから、体面を気にする夫は、私を邪険に扱うようになったこと。
――。
「どれが、真実だったかしら?」
私は思い巡らせながら、呟く。
傍らの男は、私の呟きを聞いても何も言わない。
ただ、私の手から阿片を吸っていた筒を取り上げ、私を抱きしめた。
(この男は、誰だったろう――?)
夫?
皇帝?
それとも――?
もう、何もわからない。
ただ、幸福な気持ちがあるだけ。
そう感じる一方で、わかっている。
この夢がさめたら、辛すぎる現実が戻ってくることを。
でも、でも今だけは。甘い夢に酔っていたかった。
今だけでも――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます