黄昏のエルメリア マグノリア帝国

梶倉テイク

マグノリア帝国

国名:マグノリア帝国

首都:ヴァジュラ

国家元首:ニコラシカ・エルグラド・マグノリア

 大陸西域に存在する女帝ニコラシカ・エルグラド・マグノリアが治める帝国。

 国民は曼荼羅ビフレストと呼ばれるインプラントが施され、涅槃機構システム・ユグドラシルの恩恵を得ている。


 高度演算機関たる涅槃機構は、その人間にとって選ぶべき選択肢を提示、それにより最善にして最高に幸福な生活を送ることができるのである。

 涅槃機構が提示する選択肢は真言ルーンと呼ばれ、国民はそれに従うことが当たり前と思っているため逆らうことはない。


 快適な都市空間。充実した各種公共サービス及び公共施設。世界最高の社会保障と福祉制度。

 治安は良好であり、税はなく、物価は安い。あらゆるすべては保証されている。そのためロストやトワイライトは存在しない。

 現代の涅槃楽土、それがマグノリア帝国である。


 国土は、女帝が管理する中央と六領円卓が管理する六領に分かれている。

 他国からは人形の国と呼ばれることもある。


●真実

 マグノリアにロストがいないなどというのは嘘偽りである。

 マグノリアの都市の地下区画や路地裏の暗がりには人を襲う怪物ロストが潜んでいる。


 マグノリアでは出生調査や曼荼羅による調査監視が常に行われている。

 出生前に既に検査され、ストレス耐性などの項目が、定められた数値以下の者は処分され、選ばれた者だけが国民になれるのである。

 もしロストやトワイライトになる兆候が見られれば、その時点で破棄されるのである。


 完璧な情報統制によりその事実は知られていない。

 知るべきではない。命が惜しければ。

 路地裏、都市の暗がりには管理局から逃れたロストが潜んでいる。

 被害者は出ているが、そんなものが表ざたになることはない。


 表面上は完璧で幸福だが、薄皮一枚下には深淵の暗がりが待っている。

 それがマグノリアという国である。

 そして、これを知った者は、その時点で、消去される――


●首都:ヴァジュラ

 マグノリア中央に存在する、四方を壁に囲まれた、碁盤目のように理路整然とした清潔感のある箱庭の如きマグノリアの標準的な積層型都市。

 ヴァジュラ中央には、浄土ピラーと呼ばれる積層都市を貫通する塔が建っている。

 ここはニコラシカの居城であり、すべてのマグノリアを支える涅槃機構が存在する重要施設でもある。

 下層には開発放棄区画などが確認されるが、公式の記録には存在しないことになっている。

 裏路地や放棄区画などの暗がりは管理局から逃げ出したロストの巣窟となっている。


●女帝ニコラシカ・エルグラド・マグノリア

 36歳。

 マグノリア帝国女帝。太陽を失った未亡人。自分では輝けぬ漆黒の月。

 人の輝きを愛し、その輝きが失われることを何よりも悲しみ、それを永劫にしたいと願う。

 その手段は、輝きが劣化する前に殺すという狂った女。

 美しい蝶を見つけたらそれを永遠のものにしたいと標本にするのと精神性としては同じである。

 七領あったマグノリアの一領を虐殺し尽くした過去を持つ。


 彼女が永遠にしたいと思い殺そうとするのは、涅槃機構から逸脱した人間である。

 ただ涅槃機構に従う人形ではなく、涅槃機構の選択を拒否し、己が生きる道を定めるイレギュラーを尊いと思い、その輝きを永遠のものにしようとする。

 十戒や六領円卓はそうやって殺しに行き殺せなかった者たちのことである。


 その本質は、ただの寂しがりの女である。

 ただ置いていかないでほしいから、ここにいてほしいからずっとそばにいてほしいから、殺すのである。

 女帝故その本質を表に出すことはない。


十戒デナリウス

 完璧で幸福なる国マグノリアのシステムから逸脱するイレギュラーが時折現れることがある。

 それこそが十戒。

 システムが定めた幸福で完璧なはずの人生や運命を否定し、己が生きたいように生きる人間のこと。


 女帝ニコラシカがその存在を永遠のものにしようと殺そうとしたが殺し切れなかったほどの実力者たち。

 総じて強大な世界を提唱する提唱者たち

 女帝に与えられた傷を持っている。


十戒一覧

地獄界ヘルヘイム

餓鬼界ニダヴェリール

畜生界スヴァルトアールヴヘイム

修羅界ムスペルヘイム

人界ミズガルズ

天界ニヴルヘイム

声聞界ヨトゥンヘイム

縁覚界アルフヘイム

菩薩界ヴァナヘイム

仏界アースガルズ


六領円卓ヘキサド

 マグノリア帝国は皇帝直轄領を中心として六等分した六つの領に分かれている。

 六領円卓とはその領の管理者のことである。


 システムが定めた人生や運命を否定し己の生きる道筋を己で決めるが、システムがこの国に生きる人々の大多数にとっては有用かつ必要であると理解し、六領の管理運営を行う者のこと。


 システムが定めた人生や運命を否定した際に、その選択を尊いと思った女帝が殺そうとしたが生き延びた実力者たち。

 軍服などのデザインは統一されてなく自由。領地の特色などは設定者に一任する。


 もともとは七領あったが、太陽を失ったニコラシカの手により虐殺され失われた。

 今ではその領には何も残っていない。


 女帝に与えられた傷を持っている。


●ミーミスブルン

 管理者:神足通ミーミスブルン


●ウルザブルン

 管理者:天耳通ウルザブルン


●フヴェルゲルミル

 管理者:他心通フヴェルゲルミル


●ウートガルズ

 管理者:宿命通ウートガルズ


●ガストロープニル

 管理者:天眼通ガストロープニル


●スリュムヘイム

 管理者:漏尽通スリュムヘイム


涅槃機構システム・ユグドラシル

 マグノリア首都ヴァジュラに存在する超巨大演算機関。

 遺伝子情報、健康状態、個人の適性を基に、人々が最適で充実した完璧で幸福な人生を送れるように真言の提示などの支援を行う包括的生涯支援システム。

 人類最盛期に開発された大量のスーパーコンピューターの並列分散処理により、この機構は構成されている。

 意志を持たぬマグノリアの頭脳。


曼荼羅ビフレスト

 涅槃機構と常時接続できるクオリアマンマシンインターフェースインプラント。出生時に肉体に埋め込まれる。

 曼荼羅への適合性も国民として生を受けるための重要項目である。

 UIは網膜投影型。

 通信から情報検索、視力補正など様々な機能を持つが、最も重要な機能が真言ルーンである。

 涅槃機構が提示する人生の選択肢。これを選択、従うことで完璧で幸福な人生を歩むことが出来る。

 十戒や六領円卓を除き、この真言に従わない者はだれもいない。


《業》

法の業リタ・ヴラタ

 マグノリアにおける剣の業。

 一定範囲に己の世界法則を展開する業であり、それはかつて描いた己の夢をその手に取り戻すための業である。

発動すれば、己の世界の法則をこの世界に提唱し、適用することができる。つまり固有結界。

 インプラントされた曼荼羅は特殊なクオリアでありそれを以て発動する。

 発動の際には下記の定型詠唱とともに、己の世界を謳うことが必要。詠唱は聖歌と呼ばれる。


 定型文

 提唱せよ我が世界の法則を――我らが世界を取り戻さんがため



《術技》

●ニコラシカ

 黄昏よ永遠なれ、我が死の館にて

 満天の星と巨大な満月の浮かぶ世界を展開する。

 輝く星は、彼女の愛した輝きそのもの。

 月は自ら輝かずその光で輝く。

 つまり、殺した者の全能力の保存と許可を得ての全能力の行使を可能とする世界。

 ただし、能力行使には相手側の許可が必要である。

 ニコラシカの性質は理解されがたいため、所持している能力の大半を使用することが出来ない。

 更に輝きを星とするには自らの手で殺さねばならない。


聖歌

 提唱せよ、我が世界の法則を――我らが世界を取り戻さんがため

 貪欲なる狼、思考と記憶の渡り鴉よ

 我が玉座の前に侍るべし

 戦死者たちよ、汝らの輝きは掛け値なしに美しい

 何よりも尊く、何よりも気高いものだ

 疾く戦乙女の導きを受けるが良い

 その輝きを永久不変のものとするのだ

 我が館は、汝らの為に開かれている

 汝らの輝きでこの天地無辺の世界を照らしてくれ

 黄昏よ永遠なれ、我が死の館にて

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