EnemyGuardian

ミナトマチ

第1話 ヒーロー強制連行

「魔王様……準備が整いました。」


薄暗い部屋の中、蝋燭ろうそくの明かりだけが照らす部屋の中央に人だかりができていた。


「うん……それでは、始めようか。」


魔王……と呼ばれた異形の王は、数人のローブに囲まれて、部屋の中心に立っている。

ローブの者達の顔は見えない。

部屋の特異な点を挙げるとすれば、その魔王の目の前に、部屋いっぱいにえがかれた、があることだ。

さらに、中央にはなぜかびついた

鉄の輪が置かれている。


ローブの1人に促された魔王は、一歩踏み出すと、右手をゆっくりと掲げた。

息を一つ吸い込んで、詠唱えいしょうを始める。


「異世界から現れし、世のことわりを超越する者よ!エルゼルタート・カタストフィアの名の下に召喚に応じたまえ!」


言い終わるやいなや、魔法陣がぼぅっと光を放ち始める。

やがて光は風に変わり、魔法陣の中心で渦を巻き始めた。天井に届かんばかりの風だ。

その様子を見ていたローブ達は歓声をあげた。


「やったぞ……はは、遂にこの時が……」


「これでやっと……やっと、あの忌々しい……」


魔王ロードに今一度の栄光をっ!」


風が巻き終わると、歓声も止む。

一同がじっと、現れた異世界人に注目した。

どのような人間なのか?

いや、人間とは限らない。自分たちと同じ、なのかもしれない。

性別は?能力は?戦闘力は?

皆が期待の眼差しで、それぞれの思いを表している。


そして……現れたのは……


「スー……スー、スー……うぅうん…」


「「「……はぁっ!?……」」」


「何っ……!!」


魔王を含めた、その場の全員が、驚きに目をむいた。


現れたのは、召喚に応じたのはベットだった。

正確には、もちろんベットではない。

木造のベットの上に、魔族や、それこそ勇者とは1番縁遠いような少年が、気持ちよさそうに寝ていたのだ。


「ま、魔王様っ……これは、一体……」


「…………」


おずおずと、一人が魔王に尋ねる。

魔王はそのまま、無言のまま、取り敢えず起こしてみることにした。


「もしもし……起きてくれ、異世界人よ……

おい……おーーい……」


「スースースー…………」


少年はいくら揺すらても一向に起きる気配がしない。


「おーーいっ……いい加減に、起きろっ!」


我慢の限界からか、魔王は勢いよく上の布団を剥がしとった。

これでも起きなければどうすればいいのか……という魔王の不安を杞憂に終わらせ、少年はゆっくりと目を開ける。


「…………」


「「「……………」」」


まだ寝ぼけているのか、ぼーっと目の前の集団を見つめたまま固まっている。


「あれぇ……ここは……あ、夢か。この前もこんなことあったしな……よし、二度寝を……」


「夢の中で二度寝をしてどうするっ!」


魔王は反射的にツッコミをいれる。

すると、少年は少し意外なように、首を持ち上げた。


「……結構リアルな夢だな……丁寧に答えてくれるなんて……いや、なんだこの匂い……

まるで、年季の入った講堂みたいな、独特の……」


魔王は呆れたように、首を振る。


「なかなかすっとぼけた方だな。失礼を承知でお尋ねするが……あなたは一体?ああ、こちらはエルゼルダート・カタストフィア。このマルシアの世界で、東の地方を治めている……いや、魔王……これも正確には、。」


少年はいよいよ、不審に思い始めた。

ただの夢にしては、夢の住人の一挙手一動が本物みたいだ。

それに、少年にはそれよりもリアルに感じる自分の五感を、どう説明すればいいのか分からなかった。


ちらっと少年は後ろのローブを見てみる。

情報を集め、整理しようとしたのだ。

すると、いいタイミングですぐ後ろの一人がローブを外した。


「えっ……」


少年は絶句して目を見開く。

それもそのはずだ。

そのローブから覗いていた顔は、人のようで人ではない。

例えるなら……


「ゾ……ゾンビ……うわっ……」


驚いた拍子に少年は、ベットから転げ落ちそうになる。


「っ……危ない!」


すると、すかさず魔王が手を差し出して、少年の体を支える。

魔王に体を預けたまま、少年は思考する。


(魔王なのに……親切だな……それに、仮面か何かで顔は見えないけど……一瞬見えた腕、ほっそりとしてて……なんだか……いや、そんなことよりも……!)


今、目の前の魔王あいてが自分に触れている!

その真実だけが、少年の目を完全に覚まさせ、そして、恐怖のどん底に突き落とした。


「ど、どうなっているんだぁぁぁーーっっ!」


少年の絶叫が、ひっそりと暗い夜の空に、響き渡った。




「……えっと……つまり、その、ここは異世界マルシアであなたはその魔王だと……

えー……何かの撮影いや、ドッキリですか!?」


少年はオロオロしながら、あれこれと質問する。


「どっきり?……すまない、何かとんと見当がつかないのだが……とにかく、ここは異世界の……」


対する魔王が根気強く説明しようとしたところで、講堂の扉が勢いよく開かれた。

二人分の声と共に、部屋に入ってくる。


「お、その人が俺たちの救世主さんか?

……うーむ、どう見てもとてもそうには……」


「いいっ……!」


少年は目をむいた。

元々、彼はそれほど漫画やアニメは知らない方だ。

たしなむ程度。読む漫画も、有名な少年誌ばかりだ。

だが、そんな彼にも目の前の人、いや、生物には見覚えがあった。


(あの……緑色の体、人間似だけど筋肉質で背が低い……下の口から牙が飛び出してる……間違いない……)


「ご…………」


それを聞いた緑の小鬼は少し嬉しそうな顔をした。


「お!、もしかして異世界にもいるのか?俺たちゴブリンが!いやー嬉しいねぇ

そりゃあ……へへっ……おっと、挨拶が遅れたな、俺はゴブリンのドボルグ。一応、ゴブリン族の族長をしている。ついでに言えば魔王様の右腕、そして突撃隊長よ!」


「まったく……お調子者は気楽で羨ましい。

君が右腕?小指の間違いでは?いやすまない。やはり、脳みそのほうも筋肉でできているから仕方ないのだな。」


「ああっ!?もういっぺん言ってみやがれ!」


そんなゴブリンの後ろから声が聞こえていた。

言葉はキツイが落ち着いた声だ。

そして少年は、またもその容姿に驚かされる。


「うお……っ!ね、猫?」


(いや、でも……化け猫か?尻尾が2つ……それに、二足歩行で服も着ている。)


「おやおや、救世主殿。私のことをご存じない?では、改めて……私はケットシーのヴィヴィレオ。こう見えて貴族なのですよ?以後お見知り置きを。……それとドボルグ君。その勝ち誇った顔を今すぐやめたまぇ。」


少しムッとした顔で、人間のような立派な口髭を撫でながら、隣のゴブリンにそう言った。


(ケットシー?……よく分からないけど、猫のバケモノか?だとしても……)


「か……かわいいっ」


少年は、無意識のうちにヴィヴィレオを撫でていた。


「こ……こら、救世主殿……私にそんな……

違う!もっと下だ!」


抵抗しつつも、ヴィヴィレオはしっかりと場所を教え、気持ち良さそうに喉を鳴らしている。


「ガハハハッ……貴族だの、なんだの、笑わせんなよ!ハハハーッ」


後ろでは、転げんばかりの勢いでドボルグが笑っていた。

すると、乱れた場を仕切り直すように魔王が咳払いをした。

ほどなくして、静寂が戻る。


「それで、救世主殿。御身の名前を聞かせてもらえないだろうか?」


魔王はそう言いいながら、少年の方を向く。


「えっ……あ、ああ。僕の名前は青野葵あおのあおい。17歳、その、よろしく?」


「アオイ殿……か。こちらこそ、よろしく頼む。」


(夢で自己紹介って……いや、流石にもう夢ではないのかな?覚めないし、終わらない。

このリアルさは説明できない。)


葵はとうとうこれが夢ではないことを受け入れたのだった。


「よし、ドボルグ。今日はお前の家でアオイ殿には泊まって頂こう。いいか?」


魔王はパンと1つ手を打って、ドボルグに同意を求めた。


「えっ……そりゃあ、何も不自由はねぇですけど……いいんですかい?ウチはその……」


「構わん。アオイ殿はこちらに来られて、まだ整理が追いついておられないようだしな。

お前の家でドワレアの手料理でも食べれば少しは落ち着くだろう。」


魔王の言葉に、ドボルグは1つ笑ってそれならばと、葵に呼びかける。


「ぜひ、ウチに来てください!さっきのドワレアって言うのは俺の女房でしてね!家はその、ボロいんですが……アレの手料理はスゴイもんでさぁ!」


ドボルグの家族愛に満ちた、妙な迫力に葵はされるがまま、首を縦に振って歩き出したドボルグの後を追った。

講堂をでて、小道に入った葵はふと空を見上げた。


「……!す、すごい!星があんなに……」


目に飛び込んできたのは、満天の星空。

手を伸ばせば届くと感じさせるほどの存在感を放ち、強い光を放って輝いていた。


(そう言えば……なんで星がみえるんだ?月も出てる。空気……いや、呼吸も出来てる。重力もあるし、えー……。)


葵は不思議に思い、思い切って自分でドボルグに話しかけてみることにした。


「あの……ドボルグさん。」


「んあ……なんですかい?あと、“さん”なんて不要ですよ。それで?」


「い、いえ……このままで。それで、そのどうして星や月が出てるのかなって思いまして……あ、僕のいた世界?にもあったものですから……」


それを聞いてドボルグは少し首を傾げながら、答えた。


「うーむ、どうして、ですか?いや、俺はそういうのは苦手でしてねぇ……異世界人の影響だと確か聞いたことも……すんません、俺にはちょっと……あ、ヴィヴィレオなら知ってるかもしんねぇです!」


そうですかと葵は黙り込んでしまった。


「じゃ、じゃあその、異世界人って……」


葵は新しい質問を投げかけようとしたが、ドボルグが足を止めたので遮られた。

話や考えごとに夢中で気づかなかったが、いつの間にか村のようなところに入り込んでいた。

目の前には、石造りの小さな家が建っていた。


「へへ、つきやしたぜ。ここが我が家です。いきなりこんな所で申し訳ねぇですが勘弁してください。どうぞ。」


「あ、ああ……その、お邪魔します。」


葵はおずおずとドアはくぐり、中へ入っていった。


「お帰りなさいっ!アンタ、今日は早いんだねぇ!……そちらの方は?」


「えっ……!!」


ドアを開けたその先の光景にまた葵は固まってしまう。

出迎えてくれたのは、先程言っていたドボルグの奥さんだろう。不審そうな目で葵を見ている。

問題はその容姿だった。

もちろん、ゴブリンである。だが、肌の色が緑であることと耳の形、牙の有無を除けば

どこからどう見ても30代の人間の女性にしか見えなかった。


「おう!えーっとこちらはアオイ殿だ。ほら、言ったろ?例の異世界からの……」


それを聞き、奥さんもとい、ドワレアはばっと表情を変えた。


「ああ、ああ!異世界からの!そんな、すごい人がこんな見苦しい所に!ちょっとアンタ!どうしてウチに来るなんて始めに言わなかったの!アンタ達ぃぃ!出てきて挨拶しなさぁぁぁいっ!!」


呼び声と共に、奥からドタドタと足音が聞こえてくる。


(えっ……まさか、子供がいるのか!?)


失礼と思いつつも、信じられないと葵はドボルグをチラ見した。

奥さんは言ってしまえば“人間似”でしかも美人の部類だ。だが、ドボルグは人間に多少は似てはいるが、それでも筋肉質な鬼にしか見えなかったからだ。

葵は子供達に若干の期待を寄せながら、玄関を見守った。


ドタドタドタドタドタドタドタ


「うおおおっっ!!アンタが異世界の、スゲー人か!」


「ちょっと、ドミー!ちゃんと挨拶しなさいよ!あ、あの始めまして……ドレナです。あ、こらドテキヤ!」


「うー、突撃ぃぃぃぃっ!!!」


「ぐへっ……!?」


活発そうな少年に、無邪気な幼女。そして世話焼きの姉といった3人が飛び出してきた。

そのうちの、幼女が葵の首を絞めている。


「こぉおおら、ドミー!失礼だぞ!少しはドレナを見習いなさい!」


首を絞めている、幼女ドテキヤを無視したかなようにドボルグはドミーという少年風のゴブリンを叱り始める。


「ぐーーー、うーーぶぁあっ……はぁ、はぁ……いや、教育は大事だけれども!」


殺す気か!という叫びを飲み込んだ葵は、まだ無邪気に腕の中で暴れている幼女を見てみた。

どこから、見ても3、4歳の人間の女の子だ。

大人しそうな奥のゴブリンも眼鏡をかけているが、普通の10歳くらいの女の子に見えた。


「何がいったい……もう、分からん!」


葵は考えるのをやめて、家の中に入っていった。

奥に通され、くつろいでいてくれと言われた葵はじっと座って待つことにした。

その間も、ドミーとドテキヤが葵をじっと見つめていたのは言うまでもない。

少ししてから、夕食ができ、葵は食卓に呼ばれた。


「スマン……少し、先にたべていてくれないか?用事を思い出したんでな。」


「用事?今から?」


「ああ、詳しいことは後で。」


夫婦のやりとりを終え、夕食の前にドボルグが家を出た。


「あの、ドボルグさんは?」


「さぁ……あたしも詳しくは……それより、アオイさん!たんと食べていって下さいよ〜!」


ドワレアの音頭で、食事が運ばれてくる。

ちびっこも集まってきていた。

葵も空腹を感じ、疑問を振り払い、目の前の食事に集中することにした。

出てきた料理は、スープだった。

それに、何かタレを絡ませたような肉料理。

野菜も木製のボウルに積まれている。


「うお、すごいな。いい匂いだし…ゴクッ……いただきます。」


葵は近くにあった肉を寄せて、口に運ぶ。


(お、美味しい!いや、待てよ……ここは、異世界だ。じゃあ、この肉って……い、いや……この歯ごたえ、味、これって……)


「ぶ、豚肉だ!」


すると、目の前のドワレアが驚いたように笑った。


「へぇ、さすがは異世界の人。マルシナブタを、知ってるなんてねぇ。」


葵は自分の知っているもので、安心したようで驚いた。

目の前のファンタジーの住人が豚肉を食べていることにも驚いた。


夕飯も終わり、くつろいでいる時に、葵はふと思い出したように席を立った。


「そうだ……すみません、少し出てきます。」


「こんな時間に?どこへ?」


ドワレアが怪訝そうに尋ねてくるので、葵は少しはにかんで答えた。


「自分のベット……というより、枕を取りに。変わると、寝られないもので……」


「そう……道は?」


「大丈夫です!」


葵はそう言って、ドボルグの家を出た。

今来たばかりだが、迷うことはない。

講堂からドボルグの家まで、多少の距離はあったが、一本道だったからだ。

道をずれないように、真っ暗な道を進むと明かりが目についてきた。


「ふぅー、よかった無事に着けて。さて、枕、枕と……」


葵は講堂の大きな扉を開き、そのままにされたベットの方へ歩み寄る。


「あ、そういえば……僕、寝間着のままだ。

…はぁ……異世界、ねぇ……。夢じゃないのかなぁ……」


ため息をつきながら、未だに信じられないといった様子で、ベットの上にある唯一の持ち物を見た。


寝具一式に、目覚まし時計。

どうやら、ベットだけが丸々召喚されたらしい。


「考えても仕方ない、か。明日元の世界に帰ることができるか聞いてみよう。魔王……は怖そうだな、あのゴブリンぐらいなら……」


そんなことをブツブツ言いながら考えるうちに、さらに奥の扉の先から、声が聞こえてきた。


「?……何だろう?さっきの人達かな?人っていうより、化け物だけど……もしかして僕のことについてかな。もしかしたら、帰る方法がわかるかも」


葵は何気なしに、その光に誘われて、蛾のようにフラフラと奥へ入っていった。

この講堂は、腐敗や割には見た目以上に大きい。

どうやらそこは、会議室らしかった。

葵が聞き耳を立てると、さっきのゾンビみたいなのと、ドボルグとヴィヴィレオ、そして、魔王の声が聞こえてきた。


「魔王様……どうするおつもりですか?」


「…………」


魔王が話さなくても、構わないという風に、葵にゾンビと言われた、厳密にはリッチのコーネリングがヒステリックな声を上げた。


「いい加減にしてくださいっ!魔王様はこの事態の重大さをまるで理解しておられない!

、それなのに、なけなしの貯蓄した全ての魔力を使い、使というのに、結果が人間の子供ですか!?」


それを聞いた葵のの心臓がさらに早く脈を打ち始めた。


(東の魔族が壊滅?何なしの?初代の遺品?何がどうなって……)


「まぁまぁ、落ち着けよコーネリング。結果的にそうなったなら嘆いても仕方ねぇだろうが。終わったことよりも、これからどうするのかを考えた方がいいと思うけどな」


コーネリングを落ち着かせようと、ドボルグが前向きな言葉をかけた。


「黙れ、下級魔族が!貴様のようなバカに今の危機が理解できるとは思っておらぬわ!」


場を乱すまいとしていたドボルグだが、椅子を蹴り飛ばすようにして立ち上がった。


「このヤロー……言わせておけばっ……!」


その間にゆっくりとしたヴィヴィレオの声が割って入る。


「二人とも落ち着きたまえ。ゴーネリング、確かにドボルグは脳筋バカだが、愚か者ではない。この状況下で、彼の提言は至極真っ当なことだと、私は思うがね……それとも、貴公には何か名案でも?」


ヴィヴィレオの言葉に、ゴーネリングはその黒いローブの下から覗く醜い顔をさらに歪ませて笑いながら言った。


「ああ、あるとも。とっておきがな。」


「とっておき?」


その場の全員が注目するなか、ゴーネリングは高らかに告げた。


!!この【召喚の儀式】には細かなルールがある。あの召喚に使った魔方陣が消えてしまう前に、呼び出した者を生け贄とすることで一度だけ、もう一度召喚し直すことができるのだ。

品質は落ちるが、今のアレよりはマシだろう!」


「えっ……な……っ!?」


(僕を殺す?……コロス、殺すだって……!

そんな……そんなの冗談じゃ……)


ガタッ


「むっ……!誰だそこにいるのは!」


「しまっ……」


扉に手を掛けていた葵は、あまりのショックに手が滑ってしまったのだった。

ゴーネリングの声とともに別の黒ローブが勢いよく扉を開けた。


「なっ……お前……!」


「……っ……!!」


ゴーネリングを含めたその場の全員にどよめきが起こる。

魔王もここへ来て初めて、動揺した様子を見せた。


「う……うわぁあああっつつつーーっ!!」


見知らぬ土地、恐ろしい異形の者共、そして圧倒的な深い恐怖。

それらが、少年の足を自然と加速させた。

壁にぶつかりながら、転がりながら、葵は当てもなく、ドアを蹴り破るようにして、一筋の明かりも見えない夜の異世界へと飛び出して行った。



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