人魚の水槽
タナカアヤ
第1話
全く仕事が決まらない。今日、面接した会社もおそらくダメだっただろう。
そんなことを考えながら住んでいる団地の中を進んでいく。
団地の中にある小規模な商店街の一角に見たことない店があった。
そこはいつもは使われていない空き店舗で、たまに一時的に店が入る。
多くは健康食品や高めの健康器具の店が入ることが多い。
のぞいてみると、薄暗い店の中に所狭しと骨董品が並んでいる。
面白そうだと思い、一つ一つ商品を見てみた。店の奥に来ると、水晶玉のようなものが暗闇にボウッと浮かびあがった。キラキラ光る水が中にたくわえられ、白い魚のようなものがいた。近づいてよく見ると、それは人魚だった。
歌声が聞こえる。
不思議に思いながらも強烈に惹かれ、それを手にレジへ向かった。
「すみません。これ欲しいんですが、おいくらですか?」
「値段は決まっていないんですよ。」
「・・・え?」
「お客さんのお好きな値段でよろしいですよ」
財布を見ると3000円しかない。
それを全てトレーに出した。
「お代は頂きました。ありがとうございます。」
店主はダンボールを出してきて、その中に台座と丸い玉を入れた。
ぼくはダンボールを受け取ると店を出た。
その姿を扉の近くで見送りながら店主は一人呟いた。
「もっと高いものを頂くことになるかもしれませんがね・・・」
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