第32話 お札(おふだ)
学校帰り靴箱に赤いシールが貼ってあった、これは高坂君が考えた連絡方法で赤は至急、ここを出たところで待ち合わせ、緑なら商店街の入り口。
なので靴を履き替え外に出て待つ、ちなみに他に人がいるときは知らない振りして学校入り口の橋を渡る。
外で待っていたら高坂君が中から顔を出して「先に行ってて」とだけ言って中へ戻って行った、友達と出くわしたのかな。
少し歩いて人気がなくなったときタッタッタッと足音がして、
「ごめん人が居たから」
高坂君気にしすぎ、オタク友達に知られたくないらしいが私はコソコソしている様で嫌な気分。
何も言わなかったら、
「今朝の通行止めの事が分かったんだ」
これには答えるしかない。
「何が有ったの」
「電柱にヒビが入って倒れそうだから通行止めにしたんだって」
「電柱ってコンクリートだっけ、折れたりするの?」
「台風とか車がぶつかったりして折れることはあるけど」
「何かあったのかな」
「それは不明、近づいて見れないかなあ」
「今朝の感じなら入れなくもなさそうだったけど」
「帰り道だし行くしかないよね」
今朝のフェンスがあったところまで来るともっとしっかりしたフェンスになっていた、トラックが入れる程広くなっているし。
フェンスを押したり引いたりしながら、
「入れそうにないね」
「だね、無理に入ったら怒られそう、あきらめるしかないんじゃない」
「これじゃあ葛の葉にも行けないかも」
「今日はあきらめなよ」
「分かった帰る」
家に帰ったけどどうも気になる、商店街の北側の入り口まで来たけどやっぱり通行止め、ここの左手の狐横丁の入り口は取り壊した家の残骸は取り除かれているけど通行止めにされたままになっている。
フェンスの中の様子を伺っているとフェンスの奥にある家の人がフェンスの一部分を押して外へ出てきた私をジロッと見て通り過ぎる。
この顔(今は白狐と茶狸が顔の中央ではっきり分かれたキメラ状態)で好意的に受け取られる事はまずない。
「変な子」くらいならまだいい方だろう。
とにかく中へ入れることは分かったけど、一人は危険だ動けなくなる可能性がある。
(そうだお父さんを迎えに行って帰りに中へ入ってみよう)
一旦家に戻り5時まで待機、
「お母さんお父さん迎えに行ってくるね」
「どうかしたの」
「商店街の北側が通行止めになっているの、原因を確かめたいんだ」
「そう、お父さんがいれば安心ね、一人で見に行ってはいけませんよ」
「分かってる、迂回のところで行き違いになるかもしれないからすぐに駅まで行くから」
駅に着く前にお父さんがこっちへ歩いてきた。
「善繡どうした?」
家に向かって歩きながら、
「朝商店街が通行止めだったでしょ、調べに来たの」
「ああ電柱が倒れそうとか言ってたな、まだ通行止めだったかい?」
「うんしっかりとね、一昨日の家と関係があるか確かめたいの」
「そうか、家の倒れ方が不自然だったしな」
「関係が有ったら工事の人に何か起こるかもしれないし」
「善繡はえらいねえ、工事の人の心配まで出来るんだね」
「だってこれが私の仕事だもん、ほかの人には出来ないことだし」
フェンスの近くまでやってきた、しっかりと塞がれたフェンスを見てお父さんが、
「なんだやけに大げさだな」
「倒れたら危ないからじゃないの」
「今日の内に取り替えられなかったのかねえ」
「そんなに簡単に交換できるの」
「簡単かどうかは知らんがいつもは電気工事はあっという間に終わらせている、一晩停電なんて大変だろ」
「電気は止まってないみたいだったけど」
「それでかな、しかしこれは入れるのかな」
「入れないと中の人たち困っちゃうよ、うーんとね、ここだ」
よく見ないと分からないフェンスの段差のあるところを右に押しながら引くと「カチャ」と音がして簡単に開いた。
「なるほど引くのか、それも簡単に開くんだなあ」
「右に押さないと開かないんだ、あっ」
中に入った途端ゾクッとした。
「どうした?」
「すごい気配フェンスで遮られているみたい、うわーものすごい数だめだ耐えられない」
ふらっとしたらお父さんに支えられる、すると気分の悪いのがすーと引いた。
「さすが住職悪寒が消えた、お父さん気分悪くないの」
「ああ別に何ともない数珠のおかげだろう、悪い霊でも居るのかい」
「そうだったお父さんの数珠は無敵だった、気分が悪いっていうか悲しいが積み重なって怨念みたいになってる、一人だと倒れそう」
お父さんは辺りを見回して、
「封印してあるのかもしれないね」
「結界って事?聞いたことはあるけど、お
「お札を作る人によるんだろう、うちには何も入ってこないだろ」
驚いたのでお父さんの方を向いて、
「えっうち?」
「ああ、爺さんが作った魔よけのお札が貼ってある」
「でも墓地に何もいないけど、たまに動物の霊は見るけど悪さはしないよ」
今度はお父さんが驚いて私を見る。
「居ないのか? 何も?」
「だってお骨だよ、日本の火葬なら燃やされる前に川を渡っておかないと無条件で燃やされてしまうでしょ、地獄の炎では苦しめられるけど火葬の日は燃やし尽くして何も残さないの、輪廻転生できないって事なの」
「それじゃあ遺骨はただの燃えかすって事なのか」
「まあ家族にとっては燃えかすではないよ」
「でないと坊主はやっていけん」
「おとうさん私お寺を継ぐよ」
「えっ」
お父さん驚いて言葉が出ないようだ。
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