彼の友達と恋人になってしまいました
尾形昭
第1話恋人がいて幸せ
爽やかな風が吹き渡る5月の新潟。桜・桃・チューリップが「いちどきに」咲いた。雪国では春の花は「いちどきに」咲く。春子は、毎日が、幸せだった。たとえ一間のマンションでも借りる事ができて、そのうえ恋人がいて。一人住まいを満喫していた。言う事はなかった。
長井春子は、英文学科の大学2年生。19歳だった。
英文学資料室のドアを開けて、恋人の土田直之が入って来た。
「春子、フォークナーの『八月の光』かサリンジャーの『ライ麦畑で捕まえて』がないかなあ」
「両方ともあるわよ」
「今日は友達を連れてきた。こいつは長井宏。春子と同じ名字だ。俺と同じ経済学科だ」
「ああ、こいつが春子です。宏とおんなじ名字だ。英文学科」
「こんにちは」
「こんにちは」
5分程、春子と直之は、おしゃべりをした。このとき春子に気になる事があった。1分ごとに宏が春子を、鋭い眼でにらむのだ。
やがて二人は出て行ったのだが、春子の心にいぶかしい気持ちが残った。
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