ちょっとした日常を感じる400字の会話劇

結城瑠生

第1話 ピンクの扉

「ねぇ、きいてよ」

「朝から、なんだよ」

「珍しいもの見つけてきたんだ」

「珍しいもの? いつものガラクタとかじゃないよな」

「ガラクタとかいうなし」

「は? どう考えてもガラクタだろ。ロボットとか割れた花瓶とか」

「……ガラクタ……じゃないし……」

「あぁ、もう! わかったから、泣きそうになるのやめてくれ」

「……わかった」

「――」

「――」

「それで? 珍しいものって何だよ」

「ちょっとまってね。かばんから出すから」

「おう」

「じゃぁん、これ!」

「えーっと、それなに?」

「ピンクの扉!」

「ピンクの扉って」

「小さくてかわいいでしょ」

「まぁ、かわいくなくはないな」

「さっき家の近くに置いてあったんだ」

「これが?」

「うん」

「はぁ、毎回お前は」

「これ、すごいんだよ! 中に指を入れるとね」

「入れると?」

「ビスケットが出てきます」

「ビスケットがなんで⁉」

「もう一回入れるとね」

「きけよ!」

「イチゴが出てきます」

「は⁉」

「すごいでしょ!」

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