映画のあとで(第三十二回 お題「色」)
映画館を出てから、明るさとカラフルさにしばらくついていけなかった。
ふらふら歩いていて見つけた小さい映画館に、彼女と二人とも「なんか面白そうだから」と思って入った。かかっていたのは古い映画で、モノクロの画面がゆっくりと物語を進めていった。
観念的でちゃんと中身を理解できたとは言えない。でも、その静かな展開に色がないことがとても似合っていた。
ちょっと背伸びしすぎたけど、これはこれで面白かった。そう思いながら彼女に「いまの映画、どうだった?」と聞いてみた。
彼女は「お金のムダだった」と、むすっとした顔で吐き捨てる。
カラフルな世界のなか、彼女だけが色あせて見えた。
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