凋落(第86回 使用お題「引き出しに潜むもの」)

 よう、新入りか…と、奥のほうから声をかけられた。このヒトがたぶん一番の古株さんだろう。軽く頭を下げると、まあ好きにしな、と投げやりな言葉が返ってくる。

 そこにいるダレもカレもが疲れ切った顔をしていた。怪我をしているヒトもちらほら見かける。軽傷のヒトはそのままでうろうろしてるけど、重傷というか、重体というか、こりゃ息してないだろうというヒトは、さっきの古株さんのいるところからもっと奥にごろごろしている。

 適当なところに腰を下ろして、溜息をつく。

 自分は、もっと活躍できるはずだった。寿命まで、ばりばり働くつもりだった。なんでこんなところに来るハメになったのか、訳が分からない。

 ふっと気配を感じた。メの前に、自分とそっくりのヒトがいた。おまえ、いつから仕事しだした?…と聞かれたので、たぶん二ヶ月くらい前からだと答えたら、だったらオレの後釜だったんだな…とそのヒトは何か淋しそうに言った。

 出入り口が開いて、さああっと光が差し込んでくる。今までいたところはこんなに明るかったんだ。知らなかった。知らずにいたかった。

 他のヒトたちは、ざわざわしながら腰を浮かせた。

 すぐに光はさえぎられてしまう。全体に、溜息と、他のヒトたちが座り直す音が響き渡った。

 ここは引き出しの底、引き出しから落っこちたモノたちが集まる場所。たぶん、もう引き出しの外には帰れない。

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