ひとやすみ(第45回 使用お題「仕事中につき」)
デスクの上に置いたスマホがぶるぶる震えて、メールの到着を知らせる。
仕事中につき、すぐそれを手に取るわけにはいかない。俺は、区切りのいいところまで企画書をタイプしてからそっとスマホを持って立ち上がり、すぐ目の前でむずかしい顔をして打ち合わせをしている上司と先輩に軽く頭を下げ、トイレへ行くんですという顔をして廊下へ出た。
22時を回ったフロアには、上司と先輩と俺しかいない。耳が痛いくらい静まりかえった廊下で、壁にもたれてスマホのロックを解除する。
メールは、やっぱり彼女からだった。タイトルが「無題」になってる。やべえ、早く帰るっつったのにまだ帰ってこないって怒ってるな。
開けてみて、ぶっと吹き出すのを片手で口をふさいで押さえる。続く笑いが手から漏れて、ふしゅふしゅふしゅと変てこりんな音になって廊下に反響する。
やべえ。上司と先輩に見つかったらやべえ。
でも、こんなメール反則だ。
カメラに向かって、ネコに手を振らせるなよ。その動画添付したメールの本文が「がんばれ」はねえよ。
あいつ気難しいのに、よくこんなおとなしくあいつにされるがままになったよなあ。
笑いをやっとこさっとこ止めて、俺は軽く伸びをしてフロアに戻った。
早く帰らないと、一人と一匹にどやされちまう。
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