小さきオフィーリア(第53回 使用お題「笹舟が行き着く先」「夏草」)

 小人の女の子が死んだ。

 人間がたまたま忘れていったらしい刃物が勢いよく繁りだした夏草に隠れていて、気付かずに踏んでしまったのだ。数ミリの傷でも小さな身体には致命傷だった。

 このあたりに棲む同類や昆虫は生色をなくした亡骸を囲んで、どう送りだしてやろうか思案していた。

 そこへ、蟷螂が何かをひきずってやってきた。川岸に流れ着いていた笹舟が、この子の背丈にちょうど合うだろうと言うのだ。一同で亡骸を持ち上げて収めてみると、あつらえたようにぴったりだった。

 夜を待って、少しだけ生じた隙間に白いカワラマツバをびっしりと詰め、胸の上で組ませた両手の間にマツヨイグサを一輪通して、一同は笹舟を一生懸命押して川面へと押し出した。水面に乗った笹舟は、人工の明かりの下をすーっと流れ、すぐに一同の視界から消えてしまった。

 数日後、晴れた夜に流れ星が走った。直後、あの時のあの子の肌のような乳白色のオパールが落ちた。

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