直談判(第77回 お題「真夏のクリスマス」)
真夏が近づいてきたある日のこと、春に配属された新人が真っ青な顔をして人事部長室に駆け込んできた。
「お願いします。僕を異動させてください!」
「異動って…君は春にここに異動してきたばっかりだろう」
「ですけど、もう無理です! 限界です!」
新人は今にも泣き出しそうだった。
「だいたい、君は『寒いところはもう嫌だ、暖かいところに異動させてくれ』と自分から配置転換を願い出たんじゃなかったかい?」
「はい。だけど、異動前の説明で、移動手段がサーフィンしかなくて、しかもサーフィンから落っこちたらサメにおしり咬まれるなんて話、出してこなかったじゃないですか! サーフィン練習中にめちゃめちゃ咬まれまくって、自分のおしりボロボロなんです! もうイヤです!」
「どこもそういうもんだ。最初に君が配属されてた北極の支部だって、移動中にトナカイとシロクマの喧嘩を止めなきゃならん時があるなんて話、先に聞かされてなかっただろう?」
「はい…」
「君もサンタクロースの一員だ。どんな困難も切り抜けて、笑顔で子供達にプレゼントを運びたまえ。本番はもうすぐだ」
「サンタクロースがこんなハードな仕事だなんて、小さい時から一度も聞いたことなかったです! こんなブラック企業だって、知ってたら就職しなかったのに!」
ちなみに、この世界規模のサンタクロース派遣会社の三年後離職率は90パーセントを越えるという。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます