俺はようやく登りはじめるんだ このはてしなく遠かった大人の階段をよ……

純真無垢なはずの振る舞いに、どこか大人びたつやっぽさを感じとってしまって、いかん、俺はやっぱ真正ロリなんだと思い知らされる。

 ここで童貞力・ロリコン力を発揮してへたをうちソアラにあきれられたりしたら……。加入当日に即離脱、デネブにも愛想をつかされパーティーは解散、ゲームオーバー、との流れるようにきれいなコンボ。シャレにならない。


「も、もう夜も遅いし、さっさと寝てHPとMPを回復――」


 前かがみで強調されるY字型の谷間に視線誘導されつつも、俺は、理性の先導と臆病風のあと押しでもって振りきり部屋へ逃げようとした。

 が、浮かせた腰がソアラのつぶやきでぴたり停止する。


「私、そんなに魅力ないかなあ」ぴくり、と耳が反応する。「この状況下で押し倒されることもなくスルーされちゃうなんて」


 童貞の発想の現実化きたぁ――っ!!


 速攻ですとんと椅子に座りなおしソアラに向きなおった。


 エルフ娘はくすと笑む。妖しい色を目の奥にたたえて。

 童女の顔だちにおねーさんな表情、リアル年齢と実質年齢、人に近い姿かたち。

 幻惑的な誘惑に、脳はソアラをどうとらえていいか量りかねるが、その下の臓器の心臓はおかまいなしにバクンバクン跳ねて喜びと興奮を全身で表し、さらにその下の器官もまた同様に喜びと興奮を全身で表す。その様子をあまり具体的に言及するといろいろアウトかもしれないので自主規制。


 顔が近づく。すうっとソアラがまぶた下ろす。つられて俺も目を閉じる。

 おおお、ニートで引きこもりでアニオタでロリコンの俺にもこんなチャンスがめぐってくるなんて。あの神によもや感謝することになろうとは。初めてが異世界での異種間コミュニケーションだなんて、フッ、いかにも俺らしいぜ。

 東京に戻ったら『異世界行ってエルフで童貞卒業してきたけど質問ある?』ってスレ建てして、童貞どもが『妄想乙』『童貞をこじらせた結果がこれ>>1』『お薬出しときますねー』とかほざくのを眺めてほくそ笑んでやる。

 俺はようやく登りはじめるんだ、このはてしなく遠かった大人の階段をよ……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る