大喜利『こんな勇者は嫌だ』 LVがずっと1/勇者なのに臆病/コミュ障/童貞/ロリコン/すぐ逃げる/すぐ泣く/漏らす/無能 「やかましいわ!」

「おけがはありませんか」飛んでくるデネブに、どうにか起き上がって無事を伝える。「すみません、魔法の威力を高めるために詠唱に手間どってしまって」


 俺こそ考えなしに動いてごめん、と応じて、のろのろと剣と盾を回収した。まだちょっとだけ、ほうけ気味だった。


「行こう」少しでも気をとりなおそうと、自分自身へ呼びかけるように言う。土がむき出しの道に戻り、再び街を目指して歩きだした。



 毎度のことながらみじめだ。モンスターには翻弄されるわ、アニメの実写化みたいな格好の女の子(しかも年下)に守られてるわ、おしっこちびるわ。

 『こんな勇者は嫌だ』っていうお題で挙がりそうなダメ要素を、細大漏らさずかき集めて、鍋にぶち込んで、弱火でことこと煮込んで、人型に流し込んで、冷まして型から取り出した勇者もどき、それが俺なんだろう。


「私、さっきのバトルでレベルが九に上がったんですよ」肩を落としている俺の気を知ってか知らずか、デネブは屈託なく報告する。「勇者様にとどめをお譲りできればよかったんですけど、加減が」


 そうだな、まともなRPGだったら一気にレベル五ぐらいには上がってたかもな。この世界じゃ俺が倒してもせいぜい経験値は二とか三程度だ。レベル二に到達するだけでも、まだ九千九百以上いるという事実。なんだこのマゾゲー。俺の知ってる異世界と違う。


「なあデネブ、先に謝っとく。俺、魔王倒せないわ。弱いだけじゃなく、おまえに言えないような残念な属性を山ほど抱えてるから。とても勇者と呼んでもらえるような人間じゃあ……」「私だって――」


 デネブは、俺の自嘲の言葉と自身の足を止め、少しマジな表情になって言った。「私だって勇者様に話せない秘密はあります」

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