トキをかける少女に俺は問う「なあ、変なこと聞くけど、おまえもしかして******してね?」
「一説には、魔王の居城から遠く離れたこの地なら手出しできないだろう、そう豪語した領主に魔王が激怒し、人と建物を一夜にして滅ぼし、道だけが残されたのだとか」
へ、へえー、と俺は平静を装ったあいづちを打った。
あれだけ歩き回った広い範囲を一晩で滅ぼした? どれだけ遠いのか知らないけど遠隔地から。それ、人間が勝負になる相手じゃなくね? なんかわけわかんない呪いをかけられて突然死ぬとか普通にありそう。
「勇者様、魔王討伐をやめるなんて言いださないでくださいよ」
デネブが先回りしてぴしゃりと釘を刺した。
途切れることなく続く草の海、土の橋。しかし、この付近には地形にちょっとした変化が見られた。遠くに池や群生する花、滅裂に枝分かれした木などをあって目を楽しませる。
俺はデネブと他愛のない話に興じた。最初にお使いクエストを受けたときは退屈でしょうがなかったが、道連れがいると苦にならない。どころか胸が躍る。リオのカーニバルか阿波踊りかってぐらい陽気なテンションで。こんなかわいい子と並んで歩くなんて、俺には一生訪れるはずのなかったシチュエーションだ。くそったれの神に今だけは感謝してやる。
欲をいえば、この大小のリボンが頭と胸についた魔法少女コスを、ふつーの魔道士の装束に変えてもらえれば完璧か。街でも浮いていたが、草原ではシュールすぎて。
「どうかなさいましたか、勇者様?」
「いや、なんでも」俺はごまかして、ぽかり浮かぶ雲に視線を逃し、ひとつ疑問を投げた。「なあ、デネブ。変なこと聞くけど、おまえもしかして――日本から転生してきてない?」
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