ルー○、ドラゴンを探すあのRPGなら序盤から中盤で覚えるのに

 晴天が続いていた。今日も日本晴れ。いや、アンティクトン晴れか。あまり雨の降らない地方、あるいは季節なんだろうか。

 季節といえば今はいつなんだろう。暑くも寒くもない。風に揺れる草は青々としている。春。秋。そういった疑問をデネブにぶつけてみた。


「私もこの辺りのことは……。ここから遠い地域の出身なので」どこか寂しげに答えた。


 平原に引かれた一本の線を、俺たちはただただなぞる。今回は今のところ行き違うパーティーもない。こっちの方面はエンカウント率が低いのかモンスターとも遭遇しなかった。


「たらたら歩いて移動すんのもかったりーな。おまえ、あれ使えないの? 飛ぶやつ」

「ルーナですね。あれはレベル三十以上でないと習得できない高度な魔法なので……」


 え、三十っ? そんなに難しかったのかよ、あれ。

 ドラゴンを探すあのRPGなら序盤から中盤で覚えるのに。

 最初にそれを覚えようだなんて寝ぼけたことをよく言ったよ、俺。


 やがて俺たちは問題の分岐点に差しかかった。


 【トーラス】と【トラース】。


 こっちですね、とデネブは迷いなく、左の【トーラス】に向かった。

 逆方向に行ったら分かれ道ばかりでなにもなかったと話すと、デネブは、間違えやすいので忠告を受けたはず、と言った。そういえば受付のお姉さんがそんな注意をしてたような気もする。

 右から左へ抜けてたと笑う俺にあきれつつ、デネブは少し神妙な顔つきになった。


「反対方向の【トラース】は今はもうありません。かつて存在した街の名前だそうです」

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