さらばロゴモンタスス! いや、ロンゴタスだったか? ドンタコス? まあカッパでいいや 「私はロンゴモンタヌスですが……」
魔法使い系クラス特有の脆弱さが、容易に犬の攻撃に沈んだ。腕といわず足といわず、腹に顔、どこであろうと噛みつき食いちぎる。
苦痛にもがく断末魔に、俺は血の気が引いた。目の前で人が食い殺されている。引きずり出される腸だかなんだかわからない血まみれの内臓に吐きそうだった。
ゲームなら、やられたら敵も味方も消えてなくなるのに、なんだこのグロシーン。せめてモザイクかけろモザイク。
悟空と八戒をそれぞれ見た。一進一退で犬を押し返してはいるものの、破けた衣服は相当量の血で染まっている。このままじゃ遅かれ早かれ全滅だ。
こんなときに俺はなにをやってんだ。魔王を倒す勇者なんだろ。レベルはゴミでも聖なる武具がある。モンスターですらない動物ごときにやられてくたばる勇者がいるかよ。
俺は骸となったカッパ、いや、ロンゴタスを蹂躙する畜生どもに、聖剣を振りかざし、
「うおあああぁーっ!」
必殺の一撃を浴びせた。
ザンッ。犬が一瞬ひるんで飛びのく。
……あれ?
なんかダメージ与えたっぽくなくね? ちょいビビっただけみたいな。
いや、実はダメージ量が見えたんだが――
〇・二っておかしいよね?
え、なに、小数? この世界、小数点ありのシステムなんだ? おっさんたちや犬の攻撃のときは普通に十六とか二十四とかだったんだけど、え、俺だけ? そういう仕様?
いやもうそれはいいわ。それは置いとくとして――
なんで聖剣が折れてんのかな? 犬ごときを斬った(というか叩いた)だけで。
俺が呆然としていると、うなり声をあげ犬が飛びかかってきた。よける間もなく左腕と右足を噛まれる。
「いっでえ!!」
俺は激痛に目をむき大声をあげた。悟空と八戒が斬りつけ撃退し、その隙に俺は速攻で定位置の壁際まで逃げた。
くそっ、くっそ、めちゃくちゃ痛え……。
犬に噛まれたのなんて初めてだ。シャレにならない痛みに脂汗が出る。まだ牙が突きたったままのような感覚だ。これ、一生残るレベルの傷だろ。
噛まれた腕を確かめようとして、俺は嫌なものを目にした。
――聖なる鎧に、ふつーに犬の歯型がついている。
足にいたっては紙のように破損していた。
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