強靭で純粋なる殺意の塊
ツヨシ
第1話
大木の場合
俺が片側一車線の県道を愛車で走っていると、一台の黒いバンが後ろについた。
――んっ? こいつ近くね。
所謂あおり運転というやつか。
制限速度が五十キロの道を七十キロで走っているというのに、バンは車のナンバーがミラーで確認できないほどに接近して走っている。
――めんどくさいやつだな。
俺がそう考えていると、バンが反対車線に行ったかと思うと、その車体からは想像できないほどの加速で俺の車を抜き去るやいなや、その勢いのまま俺の前に割り込んできた。
そしてあろうことか、急ブレーキをかけたのだ。
――危ない!
俺は思いっきりブレーキを踏んだ。
なんとか追突をまぬがれ停止すると、バンはゆっくりと少しばかりの距離を走り、そして止まった。
――この馬鹿やろう!
俺は車を降りて文句を言いに行ってやろうかと思った。
するとそれより先に、バンから男が下りてきた。
坊主に近い短髪に、黒のタンクトップ。
ズボンはどう見ても作業用のズボンに見えた。
車を降りた男は、静かに俺に向かって歩いて来る。
――おっ、やろうっていうのかい。この俺と。こちとら伊達に何年も空手を……。
男は背が高くて身体もいかつい感じだったが、それ以上にその顔が、その表情が、その目が異様というかあまりにも異常だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます