スパイに行ったら結婚してしまった。
山茶花 りんご
始まりは貴方。
「リヒティア帝国に探りを入れてこい。どうにもきな臭い…。」
そう言ったフレドリック・ユニア様。第一大隊長である。そして私の主だ。
この言葉一つで、私は敵国のリヒティア帝国へ出向いた。私はシャーレ・セネッティ。スミナ皇国のスパイだ。サラッと終わらせよう。そして早く、この方の傍に戻ろう。この時はそう思っていた。
「ね〜君〜ちょっと飲みに行こうよ〜!」
「いいじゃん、何もしないよ〜?」
現在、私はこの軽い男達に絡まれている。普段ならこんな事ないのに…。秒でぶっ飛ばせるが、そんな事をしたら目立ってしまう。内心、舌打ちする。無視して進む事にしたら、
「えー無視?つれないな〜?」
「あんまり冷たいと、誰にも相手してもらえないよ〜?」
しつこい…。うるさい。
「あ〜こんな所いたんだ〜!もうどこいってたんだよ〜?」
知らん男が追加された。抱き寄せられる。
「何勝手に…むぐぅっ…!?」
「しーっ!!いいからちょっと黙ってて!」
男が小声で言う。
「なんだよ、おっさん!」
「邪魔すんなや!」
男達が騒ぐ。しかし、知らん男がなにか一言二言言うと、ぶつくさ言いながら軽い男達は離れて行った。
「はいっ〜終了〜危機はさった〜お姉さん良かったね〜ん!じゃ、ば〜いば〜い」
こいつ、酔っ払ってる…。若干、足元が危ない。迷ったが、不本意ながら助けてもらった恩がある。だから…
「ちょっと。そのままじゃ、危ないでしょ。騎士団組合所に行くわよ。」
「え〜…やだよぉ〜家まで連れてって〜」
「絶対嫌よ。ほら、手。」
男の手をとり、交番まで連れていった。
「すみません、本当にありがとうございます!うちの上司、すぐこうなるから、もう!」
そう言って、頭を下げたのは帝国の軍人の男。私はこの男を知っている。
特務大隊副官、レルグレフト・アルドリーニ。何度も書類で読み、暗記した。特務大隊はその存在自体を秘匿されている。しかし、顔も名前も全員わかっていた。そのくらい、赤子の手をひねるより簡単な事なのだ。しかし、ある男だけは、どんなに調べても、探りを入れても、1度も尻尾を掴ませなかった。
「いえ、大丈夫です。」
なら、彼が上司と呼ぶこの男は―…。
まさか、こんな所で会うとは。
ヴィクトリアス・サー・サンタニア。
特務大隊長だ。
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