剣道を通して草むしりやたけのこ掘りやクマ退治などを行い青春する話☆

澄ノ字 蒼

第1話 はじまりの草笛

「おら、村一番の剣豪になるんだ」

黒い短い髪をわらでくくってまるで毛の先がお茶の時に使う、茶筅のようになっていて、麻のぼろぼろの着物を着て、そして背はそんなに高くなく140センチくらいの少年が、手に荒く削った木刀を掲げて野山を駆け回る。後につくのは、鼻水太郎、昌之助という名の少年。鼻水太郎は小太り、背はそんなに高くなくいつも鼻水を垂らしては、あんこもちを食っている少年。昌之助は主人公の隣の隣に住む鍛冶家の一人息子。結構気が荒い。そしてこの物語の主人公、手に荒く削られた木刀を持つ少年は朱ノ助。朱ノ助は両親が早くになくなってしまい、村のみんなで育てられていた。


 畑でこやしをまいていた隣家のじっさまが叫ぶ。

「ばかやろー。夢みたいなこと言ってないで働け」

「じっさまは夢がないんだよ」

「剣じゃ食ってけねえぞ」

「うるせー。いくぞ。みんな」


 そのあとを二人の少年が追っていた。

「今日は罠を作ってイノシシ捕まえて、肉食うぞ」

「おー!」

 今日も形のいい雲が流れて、いい風が吹いている。平和な村の風景である。


 星が流れ、村のみんなが寝床でうとうとと夢を見始めるころ、虫がりんりんと鳴き始めるとき、とある家の前でびゅんびゅんと風を切る音がする。

「とう! やー! せいっ!」

 朱ノ助が一人木刀を振って素振りをしているのだった。それを見守るのは狐の精霊、黄太。黄色に太いとかいて、おうたと読む。黄太とはもうかれこれ10年の付き合いである。黄太はいつの間にか朱ノ助のそばにいた。いつからだろう。ともかく、黄太。

「精が出るねえ」

「そりゃそうさ」

 稽古が終わると、草むらに寝転がる。星空を眺める。きらきらときらめいている。風がさわさわとなびいて草花がさーとこすれる音が聞こえる。その音にまじって虫たちがりんりん、がちゃがちゃ、とか歌っている。時々カラスなのか、寝ぼけてかーという声も聞こえたりもする。


「ところで一つ聞きたいんだけど、どうして剣豪になりたいの?」

「そりゃそうだよ。かっこいいじゃん」

「かっこいいから? それだけ?」

「悪いかよ」

 少年は吐き捨てる。

「別に悪くはないけどさ。なんか単純」

「いいだろ。別に。俺そんなに難しいこと考えられないし。かっこいいことやりたいなって思ったんだよ」

 黄太もごろりと草むらに横になる。

「なんか青春だねー」

「そうか」

 ふと横で黄太が、すーすー、といびきをかきはじめる。口からよだれが垂れている。朱ノ助も横になり丸まって目を閉じた。

 あたりには虫の鳴き声が響きわたっていた。青い三日月が白く輝いていた。

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