《六百間》の手順

 以下、『花ヶ岡賀留多技法網羅集』より抜粋。




用意する物品

・八八花(赤黒を問わない)

・筆記用具(獲得点数の計算に用いる)


 本項では闘技者が「二人」の場合を想定して説明する。「三人」の場合は別項を参照の事。




目的


《花合わせ》の要領にて札を集め、固有の点数と出来役の点数を加算していき、幾度か対局の後に「六〇〇点」へ到達した者の勝利となる。




準備


 一、親手を決めてから八八花を切り混ぜ、「手八場八」に札を配り撒く。この時、手札と場札何れかにシマ(同月札が四枚ある事)が確認された場合、再度手札と場札を配り直す事。





札の点数


 本技法では各札に対し、点数が決まっている。それを以下に記す。


・五〇点札……光札、《梅に鶯》。


・一〇点札……《梅に鶯》を除いた種札、短冊札、桐のカス札。


・〇点札……桐のカス札を除いたカス札。




鬼札


 本技法では《鬼札》が指定されている。それを以下に記す。


・鬼札……《柳に小野道風》。この札に限り、「の好きな札(柳のカスに限り、合わせる事が可能)」と組み合わせて、取り札とする事が出来る。但し、幾つかの細則がある為、それを以下に記す。


 一、鬼札がにある場合……この時、鬼札と合わせられる札は「柳札」「起こした札」である。


(可能例)

・手札から《柳に短冊》を出した場合。


・起こした札が《松に鶴》であった場合。


・起こした札が《柳に燕》であった場合。等々。


 但し、起こした札が《柳に小野道風》以外と組み合わせられない時、必ずこれを合わせる事。


 但し、起こした札が《柳に小野道風》以外とも組み合わせられる時、好ましい方を選べる事。



 二、鬼札が起こされた場合……この時、鬼札と合わせられる札は「〇点札以外の好きな札」である。


(可能例)

・場の《菖蒲に八橋》と合わせる場合。


・場の《柳のカス》と合わせる場合(同月札の為)。


・場の《柳に燕》と合わせる場合。等々。



 三、手札に鬼札がある場合……この時、鬼札と合わせられる札は「〇点以外の好きな札」である。


(可能例)

・場の《桜に短冊》と合わせる場合。


・場の《柳のカス》と合わせる場合(同月札の為)。


・場の《梅に鶯》と合わせる場合。



 但し、場に同月札が三枚ある時、鬼札を使って取得する事は出来ない。鬼札は「柳の札」のみ、総取りが可能である。



※鬼札を別の月札と合わせた場合、その月の札は必ず一枚が「死に札(誰も取れない札)」となる。これは一局が終わるまでそのままとする。また、親に「死に札」を譲渡する、という事は無い。




出来役


 本技法で使用する出来役と点数を、高点順に以下に記す。


・四光……《柳に小野道風》を抜いた四枚の光札。イチコロ役(イチコロの意については後述する)。


・七短……任意の短冊札を七枚。イチコロ役。


・猪鹿蝶……《萩に猪》《紅葉に鹿》《牡丹に蝶》の三枚。三〇〇点。


・鉄砲……《菊に盃》《桜に幕》《芒に月》の三枚。但し、《花見酒》《月見酒》の出来役とは重複しない事。三〇〇点。の場合あり。


・青短……《牡丹に短冊》《菊に短冊》《紅葉に短冊》の三枚。二〇〇点。


・雨シマ……柳札を四枚。柳シマの事。二〇〇点。


小山こざん……《松に短冊》《梅に短冊》《桜に短冊》の三枚。一五〇点。


・松桐坊主……《松に鶴》《芒に月》《桐に鳳凰》の三枚。一五〇点。


大山おおざん……《松に鶴》《梅に鶯》《桜に幕》の三枚。一〇〇点。


・花見酒……《桜に幕》《菊に盃》の二枚。一〇〇点。の場合あり。


・月見酒……《芒に月》《菊に盃》の二枚。一〇〇点。の場合あり。


・くさ……《藤に短冊》《菖蒲に短冊》《萩に短冊》の三枚。一〇〇点。


・シマ……松、梅、桜、坊主(芒の意)、紅葉、桐の月札を四枚。それぞれ五〇点。



※イチコロについて


 本技法は、闘技中に相手の獲得点数が六〇〇点を超えた場合でも、


《四光》《七短》を完成させた場合、その細則をとし、完成した者の勝利とする。



※「雨流れ」「日の出」について


《鉄砲》《花見酒》《月見酒》を完成させた者の取り札に、「柳札」が一枚でもある場合、その出来役は無効とする。


 但し、取り札に《松に鶴》があった場合、もしくは一局中に取得した場合、「日の出」と呼び、雨流れを無効にする。




手役



 本技法では「手役」を採用する。それを高点順に以下に記す。


・総ガス……手札を検めた時、全てがであった場合。四〇〇点。


・手三……手札を検めた時、同月札が三枚含まれている場合。二〇〇点。


 但し、は「公開」して闘技を行う事。




手順


 一、親は手札から任意の札を場に出し、対応する札を合わせるか、そのまま捨てる。「鬼札」については前項を参照する事。


 二、山札から一枚起こし、対応する札を合わせる事。無い場合は捨てる事。「鬼札」については前項を参照する事。


 三、手番を子に譲る。子は親と同じ手順を行い、両者「手札が無くなるまで」繰り返す。但し、《四光》が完成した場合を除く。



※途中、どちらかが取り札もしくは出来役によって「六〇〇点」を超えた場合でも、終了せずそのまま続行する。




フケについて


 対局終了時、どちらかのの総点数が、《柳》《桐》を除いて「三〇点以下」となった時、これを「フケ」と呼ぶ。


 フケの場合、互いの取り札、出来役、獲得点数に関わらず、「当該局を全て無効」とする。


 但し、《四光》の完成があった場合、フケはとされる。

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