第61話「告白」
ジェットコースターにいかだ、蒸気船とアトラクションを楽しんだ後混む前にとメニューもハロウィン仕様の夕食を済ませ遂にこの時がやってきた。周囲も大分暗くなってきている。
「櫻井さん、ごめん。ちょっとどうしても行きたいところがあるんだけどいいかな」
突然のオレの提案に戸惑いながらも彼女は了承してくれた。告白スポットとして決めていたのだけれど悟られないために計画には入れていなかったのだ。そのため、第2候補も考えていたのだけれど何とか時間に余裕ができて良かった。
歩くこと数分、目的地のツリーハウスに辿り着く。
「ツリーハウスか、素敵だね~」
「うん、実はオレの大好きな場所なんだ」
その言葉に嘘はない。毎回ここに訪れるときには立ち寄るほどオレにとってはお気に入りの場所だった。
「それなら行ってくれればよかったのに」
「ごめん、時間がどうなのか分からなかったからさ。それに結構歩くことになるから悩んでいたんだ」
実際、このツリーハウスはかなり歩く。それが理由かは分からないけれど悲しいことにオレが訪れるときは人は誰もいないことが多かった。
「行こう! 」
夜のツリーハウスは綺麗にライトアップされている。オレは彼女の手を取って中へと入って行く。水車や一室の再現を見ながら階段を上って行く。1つ1つがオレの心を燻り胸を高鳴らせる。
「子供のころはさ、あの果物が凄い美味しそうで食べたいって思っていたんだ」
「そうなんだ、でも本物そっくりだよね」
「本物かもしれないよ、残念ながらそれを確かめることはできないけど」
そんな会話をしながら遂に頂上に辿り着いた。いよいよだ。
「みて、ここからパークが少し見えるんだ。これもお気に入りの理由」
「本当だ、ライトアップされて綺麗だね」
櫻井さんがオレの横に立って景色を眺める。オレはそれをみて覚悟を決めて切り出す。心臓が早鐘をうっている。
「櫻井さん、花火大会の時約束したよね。今日オレが櫻井さんのことをどう思っているか話すって」
それを聞いた彼女が真剣な顔でオレを見つめる。深く息を吸い込む。
「オレは櫻井さんのことが好きだ! 付き合ってください! 」
そう言って彼女の方を向いて頭を下げる。
告白の言葉は悩んだけどシンプルに言うことに決めた。
「え……嘘」
彼女はそう言って泣き出してしまった。泣くほど嫌だったのだろうか? もしかして友達として来ただけなのにいきなり告白されて……ってことなのかな?
「泣かせちゃってごめん」
内心焦りながらもポーカーフェイスを保ち遠出ということで持ってきたハンカチを差し出す。「ありがとう」と言ってオレのハンカチを受け取ると涙を拭いた。
「私こそ急にごめんね。修三君に好きって言ってもらえて嬉しくて…………私も、修三君のことが好きだよ」
櫻井さんが笑顔でそう言った。それが余りに嬉しくて、彼女が可愛くて我慢できずにオレは彼女を抱きしめる。
「しゅ、修三君、誰か来たら! 」
彼女が慌ててそう言うので少し放して「大丈夫だよ」と告げる。実際未だに人が登ってくる気配はなかった。いつもよりも近くにいる彼女にそれを告げようとしたその時だった。
チュッ
いつもより近いと思った彼女の唇が近づいてきてオレの唇と重なった。
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