ホワイトデー特別編「お返しは3倍返し! ? 」

 ホワイトデー前日、オレはバレンタインデーのお返しを考えていた。あれから約1か月、明日に迫ったホワイトデー! 無論当日は休日ということで……同じくお返しに悩む父とともにやってきました大きなホワイトデーコーナーが展開されているデパートへ!


 片道90分、何と父はこの日のためにこっそり有休をとっていたらしい。休日は出かけず今日もいつもと同じように出かけて母にお返しは期待できないと思わせてからのデパートで豪華なお返しを購入して当日渡すという戦法らしい。ちなみにオレは母相手に昔ホワイトデーだからとお返しにホワイトソースハンバーグを作り苦笑いされたことがある。オレはダメだったけれど父は成功すると良いなあ。


 さて、オレのお返しの相手はというと間違いなく美里さんだ! 美里さんからはバレンタインデーの時に豪華なチョコを貰ったのでそのお返しを考えに来たのだけれど……


 何と通説ホワイトデーのお返しは3倍必要らしい! !


 この説の元が分からないようだけれど給料の3か月分と良い「3」という数字が好きなのだろうか? 別に3倍でなくても同じくらいなら良いという説もあるけれど他ならぬ美里さんのためであっては奮発したい!


 特設コーナーを見て回る。バレンタインデーのコーナーとは異なりクッキーやキャンディーにマシュマロなどチョコレートのほかにも様々なお菓子が並べられていた。


 ここで注意したいのがマシュマロとクッキーだ。


 マシュマロは「貴方の気持ちを柔らかく包みこんでお返しします」とオブラートに包むように嫌いという意味が、クッキーは「友達」という意味が込められているとか。


 反対にキャンディーには「貴方が好きです」という意味が、マカロンには「特別な人」という意味があるのだとか


 美里さんが知っているのか、気にするかは分からないけれど食べ物のお返しはマカロン、キャンディー、チョコレートのどれかにするとしよう。


 他にお返しとしてはアクセサリーや入浴剤などが挙げられるがこれらはオレのセンスがお察しなのでやめたほうが良いだろう。一緒に選ぶという手があるけれどそれだとサプライズはできない。


 後は花も良いそうだ。特にバラが良いらしい! とはいえこのデパートの花屋に行ったことがないのであるのかが分からない。いざ田舎の花屋に行ってバラがありませんでしたでは笑えない。と案内板を確認するとどうやら花屋はこのデパートにあるらしい。ホッと安堵のため息をこぼす。


 というわけでこれらの中から大体3倍の値段になるように選んでいこうと思うのだけれど……そういえば美里さんから貰ったチョコレートは幾らなんだ?


 貰ったプレゼントの値段を調べるのは失礼だと考えていたから今までやったことがないのだけれどこの場合は仕方ない……のかな?


 心で詫びながら彼女から貰ったチョコレートを脳内で考える。すると悩む暇もなくすぐに見つかった。そのお値段何と16980円! その3倍となると……


「5万円のチョコレートはないからこのデパートで5万円になるようにキャンディーやマカロンを……いやそれじゃ多すぎて無理矢理5万円に合わせたようになってダメか! 」


 5万円のお返しをしつつ人から貰ったプレゼントの値段を調べるというのは調べたところによるとやはりというべきかあまり推奨される行為ではないようなのでそれを悟られないようにしなければならない。


 頭を抱えたいところだったが人目があるので腕を強く組むだけに留めた。棚のチョコレートで悩んでいるふりをして唸ること数分、オレの灰色の脳細胞が活性化する。


 すぐさまオレはマカロンとキャンディー、そして赤いバラの花束を購入した。


「美里さん喜んでくれるかな」


 オレは彼女の笑顔を浮かべながら帰路につくのであった。


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