第4話「そうだ、フリーターになろう! 」
その日の夜、櫻井さんと結婚したい! ! ! と思ったのはいいが彼女はおろか女のこともそれほど話したこともないオレはどうしたらいいのかをパソコンで調べることにした。
まず好きな女性と結婚するための第一歩は彼女と付き合うことだ! ! !
ということで女性と付き合う方法を検索した結果プロセスはざっくりと書くと
「まずは男女何人かのグループで回数を重ねてあってから2人きりで出会うようになりデートを重ねて結ばれる」
こうなるようだ。思えば大学時代は赤木しか友達がおらずグループで遊びに誘うことができなかった時点でかなり不利な状況だったのか………………とショックを受けるも今の状況を考えるとそう悲観することはない。
何故ならオレ達はこの町に2人きりの同級生なのだから! ! ! 正確には中村がいるが、彼は………………うん、ニートと比べて役所勤務と婿を決めるとなるとあまりにもオレが不利なので彼女に聞かれない限りは黙っておくとしよう。
しかし、中村の存在は悪い話ばかりではない! 数ある婿候補というと具体的にイメージは出来ないが中村となると彼の本心はともかく具体的に彼女を狙うライバルとしてイメージすることができる、そう危機感を持てるのだ! ! ! 基本怠け者のオレだが彼女のため、他にもライバルがいてそれが身近となるとオレも怠けてはいられない! 今すぐにでも行動をすることが必要だ! ! !
そして、櫻井さんと仲良くなるためにするべき行為はまぎれもなくデートだ! ! 無論デートの仕方もわからないオレは次は好きな子、デートと検索する。
一括りにデートと言っても場所に回る順番にアクセスのいい待ち合わせ場所に待ち合わせ時間に食事と考えるべきことは盛り沢山だ! とはいえガチガチに考えるのは女性の意見もあるのでNGで柔軟性も必要だ。この点はある程度仲良くなればその場の雰囲気で決められるのだろうか? ちなみに、この要素が一まとめに出来る大きなテーマパークなんかはNGらしい。ある程度仲良くないと砕けた会話ができず会話に困ってしまいその気まずさから破局の危機があるということだ。何とも難しい話だ。
しかし、元よりオレにその心配はなかった、何よりオレはニートでそんな金はないからだ! ! !
ここからだと大きなテーマパークまでバスで行って電車に乗り換えてほぼ往復のみで半日潰れるとなると1泊は必須だろう。テーマパークの入場料なら何とかだが交通費に食費、宿泊費などを考えると情けない話テーマパークデートは土台無理な話だ!
とまあ、誇れる話題でもないのだがそういうわけでテーマパークデートは最初から視野になかったわけだ。ここは田舎なので飲食店はあるも他にはカラオケかスーパーのプチゲーセン位しか娯楽がない。こうなるとバスで1時間ほどの所にある大きな町に行った方がいいだろう! そこならここより大きなデパートもあり飲食店もありやったことはないができると格好良さそうなダーツもあるらしい! 更には電車の駅もあるのだ! ! ! 東京方面に出るにはここの町から電車に乗り換えるというルートもあるがそれだとどうしてか交通費が高くなるので却下だが手ごろに大きな町に行けて都会にも行けると融通が利くのはこちらだろう。
とりあえずはここの町を検討しようと決断をしてオレはバス代と食費を計算している。よし、これなら問題なさそうだ。と安堵していたオレだったがふとパソコンに表示されたある文字が目に入った。
「なになに、割り勘する男は嫌われる? 」
何だと! ? 確かにそんな話は聞いたことはあるが事実なのか! ! ? いいや、勿論皆が皆というわけではなくそれはその人次第だろう。しかし、櫻井さんはどっちのタイプだろう? 念のために交通費も食費も全部出せるようにお金を持っていたほうが良いのではないか? オレはそう考え慌てて財布を開きお金を数える。
「た、足りない………………」
一応、専業主子を自称するだけあってオレが帰ってから家事の負担が無くなったばかりか食事が惣菜ではなく手料理になったから賃金というか感謝というか材料費も込みで幾らかお金をもらっていた。しかし、悲しいことにこのお金を全て足しても1回のデート代が出せるかどうかだった。
「この前、調子に乗って使いすぎたのがまずかったか………………」
ついこの間、外国人がバーベキューで何枚も分厚いステーキを焼いている画像をみて是非やりたいと倉庫からコンロを引っ張り出し材料を買いパーッと散財したのを悔やむ。いや、あれはあれで本当に楽しかったのだけれど………………
あの時、確かに母は「使いすぎではないか? 」と心配していた。その心配が現実のものとなったのだけれど今更「女の子とデートするからお金頂戴」なんてことは口が裂けても言えない! それに結婚まで考えていると「指輪は給料の3か月分」という言葉もある。
「よし! ニートはやめてフリーターになろう! ! 」
オレはそう固く心に誓った!
さて、働くとなると仕事を選ばないといけない。無論面接がないのが良い、できれば人と話さなければいいので時間がそれほどかからないものだ。これまで通り家事を疎かにはできないので働くのは土日祝と限られる。ここなら母親には悪いが家事を任せられるのだ!
しかし、多くてこれでは週3となってしまう。田舎は都会と違い時給1000円越えは薬剤師のアルバイトくらいしかない、よくて900あるかないかだろう。最低限の時間で人とかかわらずお金を稼げる仕事………………
「そんな仕事ないだろう」
いくら何でもこの条件全てを満たすのは不可能に思える、しかし! 脳裏に赤木との会話が蘇った!
「ケイビの仕事やらない? 」
そうだ、ケイビだ! 確か赤木はケイビのバイトをしていて時給もかなりいいと言っていたし会話も少ないと言っていた! ! 早速求人を探す………………
「あった! 」
時給1000円とはいかないが900円は超えている………………ここにしよう! ! ! 明日は買い物のついでに履歴書も買わないとな!
正直、働くのは嫌だが櫻井さんと付き合えるかと思うとそんな気持ちも吹き飛ぶくらい心が躍るのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます