0から始める恋愛~中学時代憧れだった学校のアイドルと結婚する話~

@yusuke226

第1話「偶然の再会」

 オレの名前は坂田修三、一人っ子だというのに名前が修「三」だ! 笑えるだろ?


 しかし今のオレは流石に笑えない状況にある。オレは大学を卒業してからはや数年、家に引き籠りニートをしていた。


 部屋には読み飽きた漫画本ややり飽きたゲームが転がっている。一度は女とやり飽きた………………なんて言ってみたい人生だったが何と生まれてこの方彼女もいない。不順異性交遊のない健全な男子というわけだ。


 何故オレがニートをしているのかというと、原因は中学校でのいじめだった。オレはクラスのいじめの主犯格に目を付けられ教科書にいたずら書きをされたり給食が少なかったり、暴行を受けたりした。


 教師はそれを目撃することはあったが、教師は何も行動には起こさず。オレもどうせ解決はしないだろうと教師に助けを求めることもなかった。


 しかし、悪夢だったのは中学生までだった。オレはくじけずに中学を卒業し高校に進学、そこから上京してセンターでスピンスピンしてしまったもののそこそこの大学に進学し好きな人もいて友達もいるそこそこの学生生活を送れたと思う。


 いじめのトラウマは完全に消え去ったかに思えた。しかし、問題は致命的なところで起こった。企業の面接の厳しい態度をみてオレの集団でいじめを受けていたトラウマが再発したのだ!


 就活というのは何十件も受けるものだがどこでもダメだった。どこの面接官も昔オレをいじめたやつらに見えてきやがる! 思えば高校受験の面接でこうならないのは奇跡だったと思う。その時はこの中学校生活から意地でも抜け出そうと必死だったからだろうか? そんなこんなで大事な新卒切符を闇に葬り去ったオレはほぼジ・エンド! フリーターとして働く気も起きず田舎の実家に帰りボーっと毎日を過ごしていた。


 とはいえ、家で何もしないのは親にも悪いので最低限の家事と料理はオレの担当だった。料理と言っても調べたいものを検索して出てきたものをレシピ通り作るだけでオリジナリティなどはない。でも、複数の調味料を混ぜることにより全く違った味になったり、テレビをみて良いなと思ったものを完璧とはいえないが作れるため嫌いではなかった。何より家の両親は共働きなのだ! さしずめ専業主婦ならぬ専業主子といったところだがこの前おまわりさんが訪問した時にオレを気の毒そうな顔でみたので表向きはやはり無職、ニートという扱いなのだろう。


 さてと、そろそろ買い物に行く時間か………………


 オレはニートなので人目を気にして買い物に出掛けるのは客が1人でも少ない時間帯に出かけている。オレの地域の場合その時間は10時~11時と15時~16時だ。これが都会なら平日の何時でも買い物をしていても関心を持つことはない、もしくはどこかの大学の生徒だろうですまされるだろう。しかしここは田舎で周りに大学など1つもない! 20代そこそこの男が平日の昼間にウロウロしていると否応にも目立ってしまうのだ! だから人目に付くのはできるだけ避けねばならない!


 こういうとき、主婦の味方はタイムセールなどの割引だろう。田舎とはいえ我が町でも当然タイムセールとか弁当の半額はやっているだろうが、タイムセールは人が沢山いるだろうし弁当の半額は大体閉店1時間前と両親が帰宅してから数時間も待たせることになるので基本避けている。

 とはいえ、「秘技! 昼飯は夕飯の残り物」が使えなくなった時は特別で食器の片づけをしたあとに時を待って買い物に出かけて弁当を買いに行く。


「行ってきまーす」


 独り言を言って家を出る。オレはボサボサで寝癖が立った髪もジャージに長袖と明らかに寝間着姿な服装で愛車の「チャリンコアイズシルバーバイセコー」に乗りこぎ始める。


 いつもとは変わらない町並みをみてスーパーへと向かう。この辺は田舎なので都会と比べると割高のカラオケ以外娯楽施設はほとんどないが強いて言うなら昔からある木造建築の家と新しく建て直したであろう最新の家が統一性もなく並んでいるのはギャップという意味で見ていて楽しさはある。他にも都市部と違うところは山があったり海があったりと自然がきれいなところだ。


 しかし、それ以外は娯楽はない。いや、噂だとゴルフの打ちっ放しもあったか? とはいえオレに縁はなく都会のころにやっていたゲームも田舎ではなかなか手に入らず通販での競争に負けると発売日にはゲットできずお預けだ。他にも本屋はあるも数が少なかったりカラオケは高かったりボルダリングなんてとんでもないどころか食べ物屋も少なかったりと都会と比べると娯楽は凄く少ない。そのせいか今時の若者は都会でそのまま就職することが多くこの町にはほとんど帰ってこないのだ!


 正直、都会に行きたいかと聞かれるとオレも行きたいと即答する。しかし、オレはニートだ! そんなことはできない。正月に親父が冗談か知らないけど


「来年から家賃を取るぞ」


 といった。もしそれが本当ならオレはフリーターとして都会に出稼ぎにいくかもしれない。とりあえず今はこの幸せを楽しむこととしている。


 そんなことを考えて自転車を漕ぐこと約10分、この町唯一のスーパーに到着する。地元のスーパーまで10分で着くというのはこの町ではかなり恵まれているほうだ。人によっては自転車で30分もかかりバスで来る人もいるそうだ。買い忘れで何度もこうスーパーまでの道を行き来したオレにとってはそのような状況は御免被りたかった。逆に言えば遠くの人は買い忘れることのない様に注意深くなるのかもしれないな。


 自転車を降りて駐輪場に止めて駐車場を横切りながら自動ドアを通り中に入ると騒がしいミニゲーセンのようなピロピロというゲーム機の音が迎える。このスーパーの1階は休憩スペースとゲームコーナーになっているのだ! ゲームと言ってもプリクラや太鼓、ホッケーにレースゲームと数台のメダルゲームと人気がありかつ収益が見込めそうなものしか置いていない。ここで遊ぶことはできるだろうが1日中となると厳しいところもあるだろう。現在は平日の朝10時という時間のため人はおらず空しくゲームのアナウンス音だけが響いている。無論、オレはここが人であふれるであろう時間は家にいるのでここが混んでいるところは見たことがなかった。休憩スペースも同様だ。


 エスカレーターを上って2階に行くとお待ちかねの食品コーナーだ! ! !


 さてと、今日は何にしようか?


 ここにきて献立を考え始めるのは滅多にあることではない。基本は献立を決めてから出掛けるのだが今回は何故かここで考えようとなった。ここに通うまでに身体を動かすことによる突発的な発想が浮かぶことにも期待していたがもう一つ、ここにはオレにとって心強い味方があったのだ!


 それは──────我が町の小学校の給食の献立表だった。


 我が町のスーパーには掲示物の所に学校の献立表が載っており、勿論献立表には献立が書いてある。ここから何か良さそうなものがあったら作ろうという寸法だ。


 オレは献立表をみながらスマホを手に持つ。献立表とスマホの2つがあれば料理に加え必要な材料から手順まで調べることができるのだ!


 まず目に入ったのがカレーだった。しかし、カレーは先週作ったので残念ながらボツだ。次に目に入ったのが松風焼きというものだった。調べてみるとケーキみたいに綺麗に切られた白く所々にゴマをまぶしたような食べ物がヒットする。これは給食ではわかめご飯に負けないくらいオレの好物だった。これならひょっとすると両親も給食で食べたことがあり昔を懐かしむかもしれない。


 よし、今夜は松風焼にするとしよう! ! !


 そう決めて材料を調べる。味噌や醤油といった調味料に加えネギは家にあるので買うべきはメインというべき鶏のひき肉かもも肉か!


 オレは気持ち駆け足で鶏肉コーナーへと向かう。鶏肉コーナーへ向かう途中、軽快なラジオからのマーチが聞こえた。都会のスーパーでも聞こえた曲だ! これはスーパーならどこでも流れているかもしれない。好きな曲なので興奮してしまう。そんなわけで少し気持ち高鳴りながら鶏肉を買い物籠に入れる。狙い通り人が多い時間は避けたのだが人がいないというわけではなく主婦らしき人がちらほらといたので目当ての商品だけ回収するとそそくさと退散するようにレジへと向かった。


 任務完了! あとはレジへ向かうだけだ! !


 そう、あとはレジへ向かい買い物を済ませ自転車に乗って帰り昼食を残り物で済ませ夕食までの時間を掃除や趣味で少し潰してから夕食を作り両親を待ち食器を片付け風呂に入り風呂を洗い眠る………………それがオレのいつもの日課であり今日もそうするはずだった。しかし、レジにて予想外のことが起こった! !


 オレがレジに向かうと案の定ここは数台レジがあるのだが店側も混みあわない時間帯と把握しているのだろう。そこには店員が1人しかいなかった。別にそれはいつも見慣れた光景なので問題はなかった。問題は買い物客の方だった。


長い黒髪を縛ることなく垂らしながら大きな目で店員に微笑んで「ありがとうございます」といいながらこぼれないように気を付けて両手で受け取る水色のトップスに白いカーディガンを羽織り紺のズボンを履いた20代半ば、オレと同年代くらいの女性に目を奪われた。


彼女は横顔からでも一目分かる通りの美人だった。


こんな女性がこの町にいたなんて………………


オレは思わず涙を流しそうになる。オレと昔正規雇用の椅子を取り合い見事勝利し町役場に勤めることになった中村はこの町には年の差婚なんて普通なくらい若い女の子がいないとボヤいていた。確かにオレも若い女性をみたことがなくそもそもニートなわけだから結婚はハナから諦めていたわけだがそれでも男なので目の前に美人がいるとなると胸は高鳴ってしまう。


彼女が結婚してくれるならオレは一生懸命正規雇用を探すよう努力できそうだ。


そんなことまで考えていた。しかし、どういうことだろう? この長期休みでもない平日のこの時間に店にこんな若いこがいるなんて不思議ではないだろう。………………無論オレは普通ではないニートだ。

有休を使ったのだろうか? と首をかしげる。


オレが考え事をしている間に彼女は会計を済ませたようで買い物籠を持って購入品を袋に詰めるべく、店員に手伝ってもらい籠を台の上に置いていた。


ああ、せっかくテレビでみた買い物袋の綺麗な開き方を披露しようにもオレの手にはまだ会計を済ませていない鶏肉がある、これでレジを突っ切ると問題だろうし偶然出会えた美人ともここでお別れか………………


そう諦めたとき、偶然彼女と目が合った。


彼女は………………


オレの目が大きく見開かれるのと同時に彼女の顔が花が咲くように笑顔に変わっていき籠など何のそのというようにオレのほうへと近づいてきた。


「久しぶりだね、修三君! 」


彼女は満面の笑みでオレに話しかける。


「ああ、久しぶりだね櫻井さん………………中学以来だっけ? 」


そう、彼女はオレの中学時代の同級生の櫻井美里だったのだ! ! !

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