変わりゆく日常、変わらない笑顔

勝利だギューちゃん

第1話

7月7日、ポニーテールの日。

七夕の織姫が、ポニーテールだったことから、この日に制定されたそうだが、

あの時代に、ポニーテールなんて言葉があったのかは、定かではない。


で、その織姫は、毎年この日にだけ、夫である彦星との面会を許される。

で、他の364日は、何をしているのかというと・・・

仕事をしているというのは、嘘らしい。


なぜなら・・・


「悟、いつまで寝ているの、遅刻するぞ!早く起きろ」

ハハハ・・・

一体どうなっているんだ・・・わからん・・・


僕の名前は、畑中悟。高校3年生。


織姫は、他の364日は僕に家にいる。

かねてからの、同居人が(断りもなく)呼び寄せた。


「マイル、ニオ、お早う」

「お早う、ベガちゃん」

「ベガちゃん、モーニング」


サンタクロースのマイルと、鬼のニオ。

少し前(ただいなる勘違い)から、僕の家に来ている。

平たく言えば、居候。


マイルとニオの2人は、ペンフレンドだったそうだが、僕の家で初めて顔を合わせた、


そして、もう1人に共通のペンフレンドがいた。

それが、織姫のベガ。


デジタル派のマイルは、パソコンで文章を書き、アナログ派のニオは、手書き。

で、ベガはというと・・・筆文字・・・


ここら辺は、古風なようだ、


服装は和服で、いかにも日本人女性という感じだが、性格はよくいえばお転婆。

天然なマイルや、マイペースなニオと違い、しっかりしている。

つまり、昔話で聞いた、おしとやかなイメージとは、良くも悪くも真逆。


料理は、洋食は3人の中で1番得意だが、逆に和食はからっきし。

ちなみにマイルは和食が得意で、ニオは中華が得意。

わけわからん。


「悟、説明はしなくていい」

「しかし、確認のために・・・」

「いらん、早く学校へ行け」

ベガは、ここで別れる。


マイルとニオは、玄関まで見送ってくれる。

両手に花と言えば、聞こえはいいが、あまり嬉しくないのは、贅沢か・・・


玄関先では、お出かけのキスをしてくれる。

マイルは挨拶のつもりだし、ニオも影響を受けたと思われる。


嬉しいはずなんだが・・・ときめかない・・・


マイルとニオが言うには、「仲間外れはしたくない」と、ベガを呼び寄せたが・・・

両親は、その時さすがに断ると思っていたが、1秒で承諾した。


それから毎朝、僕を起こすのは、ベガの役目になった。

「ほら、悟、ご飯食べる。歯を磨く、顔を洗う」

せわしない人だ・・・


独身(だと思う)の、マイルやニオと違い、ベガは既婚者。

夫である彦星(アルタさんと言うらしい)は、なにも言わないのかと心配したのだが、

あっさり、承諾した。


空の上も、ネット社会らしくて、今はネットで愛を語り合っている。

「種族が違うので、地上の方が浮気の心配はないので、よろしく」と、アルタさんに頼まれた。ちなみに、ネットで顔を見せてもらったが、なかなかの男前。

イケメンではなくて、男前。


ベガはフランクなので、マイルやニオと違い、話しやすい面もある。

しかし、性格がややきつい。


で、この3人の存在が、世間にばれないはずもなく・・・

すっかり、ご近所に馴染んでいる・・・


学校から帰ると、ベガは、庭で矢を放っていた。

「お帰り、悟、学校どうだった」

「まあまあかな、今日もがんばってるな」

「ああ、一日でもサボると腕が鈍るからな、お前もかんばれよ」

「うん」


で、マイルとニオはどうしているのかというと・・・

スヤスヤ寝てた。


たく・・・


僕は、こうなる前は、ハーレムを夢見ていた。

でも、彼女は1人でいい。

でないと・・・


「悟くん、でないと何?」

「マイル?」

「お姉さん、怒るよ」


「悟くん、正直にいいなさい」

「ニオ?」

「お姉さんも、怒るよ」


「ふたりとも、悟の気持ちもわかってやりな」

「ベガちゃん・・・」

「じゃあ、いつものように、3人でおじさんとおばさんの、お手伝いしよう」


マイルは僕の両親を、「パパ、ママ」と呼ぶ。

ニオは、「お父さん、お母さん」

ベガは、今のところは「おじさん、おばさん」


そう、今のところは・・・


でも、ふぅ、助かった・・・


「悟?」

「何?ベガ」

「しっかりな」

ウインクしながら、指で激励の合図をする。


まあ、ベガがいてくれて、よかったと、今日は日記に書いておこう。





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変わりゆく日常、変わらない笑顔 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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