山手線の内側には化物が住んでいる
阿尾鈴悟
序
山手線の内側には化物が住んでいる。
国の要請で何とかっていう偉い陰陽師が、妖怪化物その他有象無象、人間には理解できない超常のものを一か所に集めて、環状山手線の内側だけに隔離した。なんでも、山手線は結界を張りやすい形状をしていたそうで、内回りと外回り、二種類の線路の丁度中間の境界線から、怪異は出られないようにしているそうだ。
目的は超希少生物の保護なんて謳っているけれど、そんなこと、ただの言い訳にすぎない。そんなことは私たちの誰もが知っている。
本当は、原因の分からない不景気とか高齢化とか、理解できない社会問題の責任を、同じく理解できない存在に押し付けただけなんだ。
そこには嘘も本当もない。人間は理解できないものを恐れるから、その代表としてたまたま怪異が選ばれただけなんだ。
怪異を隔離した偉い人も、結局、力を理解されず、結界の中に閉じ込められてしまった。国はそこまで見越して、問題を怪異のせいにした。
それは仕方のないこと。
理解されなければ社会からはじき出されてしまう。だから例え嘘をついたって、社会からはじき出されないようにするべきだと思う。
もう内側にいる私は、隔離されたりしないけど。
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