第59回:テーマ『窓』
タイトル:温度差
どれだけ霜が降りて北風が吹こうが、この温室は楽園のように暖かかった。
小ぶりであるも苔から小鳥までがこの熱帯植物園のドームの中にいる。まるでノアの方舟。嵐が来ても大丈夫だろう。
私は曇った眼鏡を拭きながらそこに入る。
植物園の年間パスポートを有効活用している。
小さな滝をぐるっと回り、サボテンの生える方へ向かうところ。
そこにはガラスの壁があるのだ。
そこは君との秘密の場所だった。名前も知らない。声も聞かない。でも、君は今日もそこにいた。
君は温度差で結露するガラスの壁にくまを描いていた。
私が横に書く「ただいま」の文字に気がつく。
君が指を止め、私を見た。
次に動いた先の文字は「まってたよ」
もう一度、私の眼鏡が曇った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます