第51回:テーマ『涙』

タイトル:身勝手な独白


じわり。君の肌にそれが染み込む。私はそれを黙って見ている。運良く君は目覚めない。私は君の寝顔や整った吐息やその睫毛の長さに感動している。こんな夜がいつまでも続けばいいのになあ。

先に涙を流すのはいつだって君だった。夏の甲子園の中継やドキュメンタリー映画、どこかの災害の映像。その涙を流す君がいとおしくて、私はいつも君を抱き締めた。君の涙を私の指が拭う度、その暖かさに少しだけ驚いた。

芽吹けばいいのに。私の涙が吸い込まれた肌から枝葉を出して植物がにょきにょきと生えて、君が困ればいいのに。

君の寝顔を覗いて、エモーショナル。

死がふたりを分かさないで。

私の身勝手で限度のない独占欲が止まらなくなるうちに、朝はくる。

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