アイスポイント

アイスポイント

 ショッピングモールの中で過ごすうち、冬は過ぎたようだ。氷の世界での冬はいわばダブルパンチ、活動するのは危険だ。と言ってもまだまだ冷たいことにはかわりない。


「見えてきたな………」


遠くに見えるのは氷の砦、氷の巨大な山脈に囲まれたような建物だ。プリンのような形のアイスポイントは中に入れるというが入り口は見えない。

 


「マイン………」


 思い出せば約半年近くツララヒョウ連合国から旅だって経っていた。あの国での出来事で人々が氷の壁で困ることを減らすことができれば、と考えその一心で歩いてきた。氷の壁をコントロールし、人々の負担を減らす術を探すためとずっと目的にしてきたが、いざたどり着いて目の当たりにしてみると心臓が胸を打つ音が強くなる。


「アイスポイントだ………ミル………」


「どうしたんですかそんな緊張したような顔して」


「そ、そりゃ………」


緊張するだろ、そういうつもりだったが次の瞬間ミルが俺の手を掴んだ。そして半ば強引にアイスポイントの方へと引きずっていく。


「マインらしくないですよ。今までジグザグしながら目的にはまっすぐきたんですから」


「ミル………」


「ツドラルさんのいた雪溶け隊が攻略出ず………氷の壁を取り除いたりする術が見つかるとも限らないけれど……目的のためここまで頑張ってきたんでしょう。そんな姿勢が嫌いではないですよ。さぁ」


ミルはアイスポイントをバックににこりと笑う。俺はミルに手を引かれるのをやめ、彼女に並び立った。強く、美しいミルがここまでついてきてくれたことが嬉しかった。


「ありがとうミル。緊張ほぐれたよ」


「どういたしまして」


マントもボロボロで、手袋もグリップが少なくなっている。体も万全ではない。でも2人こうして一つの目的までたどり着いたことも嬉しく、その事実はより一層の気合いを俺に注入した。



 2人で近づくとアイスポイントを囲む氷の壁は氷の地面から数十メートルと高い。そして何よりその氷は触っただけでわかるほど硬い。ツルハシを当ててみようものならツルハシが砕けそうだ。


「なんや?お客さんかい?」


真後ろから声が聞こえた。振り返ると人型の冷気、としか形容できない守護者が立っていた。2メートルほどの身長、透明な体であるが、よく見ると冷気で形成されているようだ。手足、顔は氷でできているようではっきりと視認できる。


「あ、アイスポイントを調べに来たんだ氷の壁で困る人を減らしたい」


思わずツルハシを抜きそうたが、不思議なことに敵意がほとんど感じられない。それどころかその守護者はその場に座り込んだ。頬杖をついた守護者は喋るだけでなく振る舞いが完全に俺たちと近い。


「ワイはブリザード………アイスポイントを…文明に氷を貼った1人や」


「お、俺はマイン。こっちはミル。氷鉱夫だ」


「そうか………当ててみるで?雪溶け隊の誰かと交流あるやろ?」


俺たちは驚いた。初対面で知り合いまで看破されるとは思っても見なかった。


「がはは…驚くなよ。そうか………あいつらの後輩が………よくやってくれてるな」


「どういうことですか?」


「以前雪溶け隊がここを攻略しに来た。目的は氷で困る人を減らすため、ここの調査や。君らとおんなじ。だがワイと彼はまだ早いと感じた。だから追い返した」


「何が早いんです?」


「うーん………みんなが………頭を冷やす期間やな」


ブリザードはよっこいしょと立ち上がりアイスポイントを作る氷の壁に手を当てた。すると不思議なことにアイスポイントの壁に溶けるように穴が開き、トンネルができた。


「アイスポイントを調べるんやろ、ついてきたらいい」





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